落ちつかない猫
そしてやってきた、始業式前日。
始業式に必要なものを適当に鞄へ突っ込み、椅子の横へ放り投げる。終業式なら今か今かと待ち望むのだが、始業式は正直いつまでたっても来なくて良いと思うのは俺だけではないはずだ。
しばらくハルヒと距離を置いていたからか、久々に学校で会うハルヒのテンションを考えると今から気分が低下する。あいつのことだから、明日が始業式で通常授業より早く終わろうが問題なく団活をするのだろう。
「キョンー」
コンコン、と軽くノックの音。声で名前だとわかったので、入っていいぞ、と声をかける。しかし、数秒待っても入ってくる気配がない。読もうと思い手をつけた本を机の上に置き、扉を開けば眼前に白い腹が迫ってきた。
「うお」
「あ、ごめん」
何事かと思えば、どうやらその白い腹はシャミセンだ。なんでこいつがここに。
「キョン、ちょっとシャミセン抱っこしてくれない?」
「なんだ?」
よくはわからないが、とりあえず言われた通りシャミセンを抱き上げた。いつもはおとなしくダレている猫だが、今はなぜか抵抗するようにジタバタと四肢を動かしている。
動物病院に行くときや、妹が無理に連れて行こうとするとこういう風に動くが、何もしていないのにただ抱き上げただけでこうなるのは珍しい。
「何かあったのか?興奮してるみたいだが」
「うーん、わかんない。部屋に来たと思ったら、ずっとそわそわして部屋の中を歩き回ってるの。おかしいなって思って抱っこしたらちょっとはおとなしくなったんだけど、キョンの部屋に行こうとしたらジタバタするし」
俺が何かしただろうか。いつも通り何もしなかったはずだが。食事や遊びはだいたい妹か名前がやるので、俺が直接どうこうするということはない。それに、猫が嫌がる犬の匂いもしていないはずだ。最近犬に触った覚えがないからな。
にゃごにゃごと若干かわいらしくない鳴き声をあげながら、シャミセンが暴れる。爪は若干引っ込めてはいるようだが、微妙に出ている部分が肌をくすぐって思わず離しそうになった。
「餌は?」
「あげたよ。さっき妹ちゃんが猫じゃらしで遊んでたときまで普通だったんだけど」
ということは、食事後急に興奮しだしたということか?落ちつかず、じたばたと四肢を暴れさせるシャミセン。いつにないその様子に、俺も困惑した。
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