変な行動
何かを訴えるようなその言いぶりに、微妙どころか盛大に感じる違和感。
長門がなぜか必死な顔をしているように見えて、言葉をかけることはできなかった。
「この手袋は、彼女のもの」
と思ったら、長門から声をかけられる。
なぜ俺にまで言う必要があるのかとは思ったが、長門は俺が反応するのを待っているようだった。
「……?そう、だな」
「…………」
俺の返答ののち、数秒遅れて長門が顔を名前に向き直す。名前は長門の行動の意図がさっぱりつかめないのか、傍目から見てもマヌケな顔をしていた。
それきり長門が黙り込んでしまったので、俺たちとしては非常に困る。もう言うことはないと言わんばかりに背を向けてしまったので、とりあえず声をかけることにした。
「じゃあ、帰るな。長門」
「…………」
小さな頷きを見届けて、帰ることにした。自転車の荷台に名前を乗せ、ペダルに足をかける。早速手袋をはめたらしい名前が、俺の肩に手を置いて小さくため息を吐いた。
「どうした?」
「んー……」
進む道の先に気をつけながら問いかければ、何かを考えているような声。と同時に、何かを訴えるように手先がパタパタ動く。
「なんか、さっきの有希……、変だったね」
「変……と言うか……」
いや、まぁ変だったわけだが。
とりあえず、あの数秒で何かがあったのは確かだ。俺たちのあずかり知らぬところで手袋にまつわる事件でも起きたのだろうか。しかし、名前が不思議がっているということは、こいつも知らない何かということになる。ちょっとどころか、結構怖い。
「まあ、もし何かおかしなことが起きれば、長門から何か言ってくれるだろうさ」
「だといいんだけど……」
不安を伝えるように、肩に触れている手が震えた。
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