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女性の勘


「なんか、今日の名前、変じゃない?」

前を歩いていたハルヒが、ぽつりとそうつぶやいた。
二回目のクジ引きでハルヒとペアになり、いつもより数倍疲れる探索を終えて、また集合と相成ったところでの発言だ。いきなり何を言いだすのかと眉をひそめると、立ち止まったハルヒが振り返って俺を見る。

「ねえ、あんたはそう思わなかった?」

そう言われても、あいつは結構変なところがあるからな。たまに天然なのかわざとなのかと思うほどポケーッとしていることもある。なんとなくアンニュイになっているような気はしたが、特別変な感じはしなかったぞ。

「そう?なんか、落ち込んでなかった?落ち込んでるって言うか、凹んでる……一緒か。何か、考えてるって言うか……」

俺にはわからなかった。だが、ハルヒはたまに恐ろしく勘が鋭いので、もしかすると本当に名前は凹んでいるのかもしれない。俺には言えないような何かが理由だとしたら、当然俺には何も言わないだろう。

「なんかわかんないけど、あんた、ちゃんと名前のこと見ててあげてよね」

「……なんでだ?」

というか、何を急に。
ハルヒの発言が突発的で理解不能なのはいつものことだが、急にどうしたというのだ。普通そこは、慰めてあげろとかフォローしてあげろとか、そういうことを言うところじゃないのか?

「だから、あたしにもわかんないわよ」

何なんだ。自分から話題を振っておいて。
思わず眉をしかめた俺以上に、ハルヒは眉間にしわを寄せていた。こいつがこんな表情を浮かべることは珍しい。とんでもなくバカなことを真剣に考えているときはよくこんな顔をするが、それ以外のことでこんな表情なんて滅多にしていないからな。

「……あたしにも、わかんないけど」

ハルヒが何か悔しそうに唇をかむ。言いたい言葉があって、それを伝えたいのに、思うように伝えられない、そんな表情。

「わかんないけど……、ちょっと目を離したら、あの子、どっか行っちゃいそうで」

「…………」

それを聞いた俺は、なぜか「そんなことはない」と茶化すことができなかった。



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