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知らなくていいこと


もともと短い春休み、それももう残り少なくなったある日。
いつものようにハルヒに呼び出され、不思議探索という妙な遊び(と言うとハルヒは激怒するので本人の前では絶対に言わない)に興じていたとき、ふいに名前が呟いた。

「そっか、あと少しで二年生なんだねぇ……」

そりゃ、一年の三学期はもう過ぎたので当たり前のことなのだが。
一応春休みいっぱいは一年生、という意識があったが、あと数日でそれも終わる。二年生になれば、俺たちに後輩ができるわけだ。
後輩、後輩ねぇ。中学時代にもいたことはいたが、ほとんど関わることはなかった。だが今は、SOS団という妙な団体に入っているのだから必然的に興味を持った後輩がやってくることは間違いない。

「複雑な気分だな」

「んん?そう?」

だってそうだろう、あのハルヒが人の上に立つんだぞ。一応一年生という立場上、先生や三年生、二年生など、立場的に上の人ばかりしかいなかったというのに、俺たちが二年生になれば一年生という立場的に下の者ができ、……ああもうつまり、ハルヒが誰かの上に立つことになるじゃないか。想像するだけで恐ろしいぜ。

「ハルヒは一応常識的だから、そんな無茶なことはしないと思うけどね」

「わからん。あいつは何をしでかしてもおかしくないやつだぞ」

「うーん……まあ……いやでも……」

言いづらそうにもごもごと口を動かした名前は、探した言葉が見つからないみたいにくしゃりと苦笑いをした。
不思議探索のペアが名前で、ハルヒがいなかったからこそ言えることだ。本人がいたら失礼ねとでも言いながらバックドロップでもかまされたに違いない。

「ま、いろんな意味で複雑だけどね」

「いろんな意味って……何だ?」

ぽつりとつぶやいた名前がほんのり寂しそうに笑ったので、一体どうしたことかと問いかけたが、結局答えはくれなかった。

「キョンは知らなくていいよ」

何か腑に落ちない返答ではあったが、こいつが一度言わないと決めたら絶対に言わないやつだと知っていた俺は、それ以上突っ込むことも出来ずに口を閉じた。



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あきゅろす。
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