手作りクッキー
フェリーの港に足を着け、今まであった出来事を振り返ってみる。そうだな、俺の頭の中にぱっと浮かんでくるのは腹立たしいことに古泉ばっかりなのだ。変な意味ではなく。
あいつが副団長に拝命されたり、UMA探索よりは良かったじゃないかと俺を諭したり、名前に弁当のことについて意味も無く何度もお礼を言ったり、宿泊代はタダなんて気前のいいことを言い出したり…。見事に古泉だらけだ。気色悪い。
「キョン、食べる?」
突然目の前に差し出された袋に、急いで古泉のことから意識を離して集中する。袋を持っているのは名前だった。
「なんだこりゃ」
「クッキー。色々手持ち無沙汰だし、小腹がすくだろうから作ってきた」
開いた袋の中からはそりゃもう店で売ってても別段不思議ではない、綺麗なクッキーが所狭しと並んでいた。
朝飯が既に消化されかけていた俺の腹から、軽快な音が鳴る。気づかれない程度の音だったようだが、無駄に恥ずかしかった。
朝比奈さんがふわふわと大きな帽子を揺らせながら近づいてくる。
「あたしももらいました。とってもおいしかったですよ」
「ありがとう、みくるちゃん」
目の前で繰り広げられる姉妹のような会話(ちなみにどっちが姉でどっちが妹かは割愛させていただこう)を耳に入れつつ、俺も一口頂戴することにした。
勿論うまい。そりゃ折り紙つきだ。ハルヒにいたっては一度に三枚四枚平気で取っていく有様だし、長門は一枚ずつだが食べるペースが無駄に速い。
そうこうしていると、フェリーに乗り込む時間になった。
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