愛される犬
ハルヒのがさつな抱き方にも構わず、ルソーは嬉しそうにぶんぶん尻尾を振っている。もともと人懐っこい性格なのか、知らない人間に囲まれてテンションがハイにでもなっているのだろう。
「ふっかふっかね。このジャン・ジャック」
勝手にルソーを改名して呼び始めたハルヒを咎めるよりも先に、阪中が笑みを浮かべた。
「あはは、涼宮さん。それ、あたしのお父さんと同じ呼び方」
ハルヒと阪中家父の名前センスが似たりよったりな事実にどんな反応をすればいいのか迷いつつ、とりあえず苦笑を浮かべておく。
「で、あんたが散歩中に不思議なものを嗅ぎつけたってわけなのね?そうなのね?」
どんな場所でも自分のペースを乱さないハルヒが、楽しそうにルソーに問いかけた。当然犬は答えることなくぶんぶん尻尾を振っている。そしてそれはハルヒの問いかけに応えたわけではなく、ただ抱っこされて嬉しいからとかそういう単純な理由だろう。しかしハルヒは満足そうにうんうんと頷き、ルソーを抱えなおした。意思疎通でもしているのか。こいつなら本当にやりそうで怖い。
「でも、本当に幽霊って決まったわけじゃないし。ただ、この子や他の子たちが怯えるものは一体何なのかわからないから不気味でしょ。だから、幽霊じゃないかって噂が広まっちゃったのね」
「まずは、調べてみてみないと話になんないわね。さっさと出かけましょう!」
「あっ、ちょっと待って。着替えてくるから」
玄関口に立ちっぱなしだった俺たちに断りを入れ、阪中が自室へ引っ込んでいく。その際、上がってお茶でも飲んで待っていてくれと言われたが、ハルヒが拒否した。上がって待つと出かけるまでに時間がかかりそうだから、というのが理由らしい。たいした違いはないような気がするんだがな。
「ルソー、おすわり」
「あら、ほんとによく躾されてるわね。このジャン・ジャック」
「いい子さんですねぇ……」
阪中がいない間に名前たちはルソーがどれだけ躾をされているのか確認したり、もふもふしたりしていた。すっかり白い犬の虜らしい。
唯一長門だけは、最初こそ注目したものの(多分危険性がないかどうかを調べていたのではないだろうか)、すぐにルソーから視線を外していた。
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