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憶測の話


「その意味のわからん笑顔については何も聞かずにおいてやる」

「おや、それはどうも」

部室の中から漏れる朝比奈さんの悲鳴をBGMに、古泉に話しかける。ちょうど俺たちの間にいた名前が、俺と古泉の話し始める雰囲気に気付いてそそくさと退いた。そのまま先ほどとは違うものの俺の隣に立ち、続きをどうぞ、と言わんばかりに口を閉じる。

「だが、お前はどう思っているんだ?」

「何をですか?」

言わんでもわかっているだろうに、面倒なやつだ。
ちらりと部室の扉を見てから、再び古泉に視線を戻す。

「阪中が持ってきた話だよ」

「ああ……。あらかじめ断っておきますが、僕に思い当たることはひとつもありませんよ。それに、今の段階では言えることはほとんどありません。あっても、憶測の域を出ませんし」

「言ってみろ」

長門たち宇宙人側の持ちだしたものではない、古泉たち機関の持ちだしたものでもない。未来人は「ハルヒを刺激するために」なんて目的で必要以上に現時空を荒らしたりはしないから、その線はナシとして。やっぱり、本当に幽霊なのか?

「犬たちが一斉に一定の地区へ近寄らなくなった、という話でしたね。では、ここで問題です。人間よりも犬が優れている特性は何でしょうか?」

「嗅覚だろ」

「嗅覚!」

ちゃっかりクイズには参加してくる名前に笑いをこらえつつも、古泉の反応を待つ。にこりと笑った古泉は「正解です」とつぶやいた。

「ですから、阪中さんの散歩コースに犬の嫌う匂いを発する何かが埋められている、あるいは埋められた可能性があるのでは、というのが僕の見解です」

なるほどな。
人間と同じく、犬や猫にも嫌いな匂いってものは存在する。俺たちよりも何倍か何十倍か鼻が良かったはずだから、微量の匂いでも嗅ぎつけてしまうのだろう。と考えると自然だが、本当にそれで正しいのか?

「どちらにせよ、真相はわかりません。僕がお話したのは、あくまで憶測の話なので」

珍しく苦笑気味の古泉がそう言ったと同時、部室の扉が開いた。



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