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実地検分


「だいたいのことは飲み込めたわ」

おい本当か、と聞きたくなるほどあっさり、楽しそうに言ったハルヒを見る。俺にはとりあえず犬猫が立ち入り拒否をする地域が発生したということだけなのだが。

「情報なんてそれで十分よ。ここで推理合戦したって問題は解決しないわ。やっぱり現場に足を運んでみなくちゃ、何もわかんないわよね。きっとそこには、動物の本能でようやく気付けるレベルの何かがいるのよ。幽霊とかオバケとか、あと妖怪とかね」

幽霊とオバケなんてほぼ同義じゃないのか、という俺の突っ込みはスルーして、ハルヒは荷物をまとめ出す。いや、ハルヒが口にした以上本気だということはなんとなく察していたが、まさか本当に今から動きだすとは思っていなかった。
そこでなんとなく思い出す、喜緑さんの存在。以前もこうして彼女が依頼に来たが、あれは彼女側がしくんだ事態だった。今回も実は阪中が長門側の存在で、適当にハルヒが引っかかりそうな話を持ってきただけと言うのなら……って、んなわけないか。
確証がもてる1つの事象がある。視線の先にいる長門だ。もし阪中が長門側の存在なら、阪中が持ってきた依頼にあまり反応しないはず。しかし、今の長門は違った。
きっと俺と名前くらいしか気づいてないであろうが、長門が阪中の話に興味を持つような顔をしたのだ。あらかじめ知っていることであれば、些細とは言え表情をこんなに変えるはずがない。つまり、これは長門たちにとってもイレギュラーな事態。少しだけホッとすると同時に、得体の知れない存在に気味の悪さが生じる。
まさか本当に、幽霊なのか?

超能力者宇宙人、未来人に異世界人まで揃ったのだから、そろそろ幽霊だの妖怪だの多少不思議な存在が現れてもおかしくない、そう思った矢先だった。

「じゃあ、みんな今から出発するわよ」

悩みも考える暇もなく、ハルヒがガタガタと音を立てて立ち上がる。

「カメラと……幽霊捕獲装置はないわよね。お札も欲しかったけど」

「市内の地図も必要ですね。実地検分をしてみたいと思います。あなたの家のルソー氏にもご協力願えますか?」

「いいのね。ルソーの散歩のついでなら……」

やたらノリノリな古泉が椅子から立ち上がりつつ言う。こいつ、すましたツラしてやがるが、実はこういうオカルト系が好きなのか?いやむしろ、生き生きとしたハルヒに付き従うのが生き甲斐とか。……ないな。



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