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犬仲間の言うことには


テンションの上がりきったハルヒはそれからあれやこれやと坂中に事情を聞き、一人で盛り上がり始めた。こんなにフルスロットルなハルヒを誰が止められるというんだ。というか誰が止めるんだ。このメンバーの中では俺しかいない。
半ばうんざりした気持ちのままハルヒを止め、坂中の話をもう一度落ちついて聞かせることにする。最初は俺の対応にぶつぶつと文句を言っていたハルヒだったが、一応はおとなしくなってくれた。

ようやく落ちついたハルヒを前に、坂中はほっとした態度を隠せないようで、どこか安心した表情で俺を見た後、小さくつぶやいた。

「最初に気付いたのは、ルソーだったのね」

はて、ルソー?
ルソーってのはあれか、歴史の教科書でたまに見る……。

「家で飼ってる犬なんだけどね」

なんだ、犬か。って、そりゃ当り前だ。自分にセルフツッコミをしながら、坂中の言葉を追う。
そのあたりから坂中の必要なのかそうでないのか判断しかねる話も混ざり始めたので、俺なりに要約するとこうだ。

日課であるルソーの散歩をしていたところ、近頃から急にルソーがお決まりの散歩ルートを嫌がるようになった。おかしいな、と思いつつ散歩ルートを変え、ルソーの散歩を続けていた坂中だったが、どうやらおかしいのは自分の家の犬だけではないことに気がついた。他の散歩仲間・犬友達も、犬がいつもの散歩ルートを嫌がるようになったと言いだしたのだ。
坂中ほか、近所の方々はいつもの散歩ルートと何ら変わりない。変なにおいがしたり、妙なものが住みついていたりということもない。だが、犬だけは嫌がる。ついでに、たまに見かけた猫も最近では見ない。ならば、人間には見えない、犬たちだけに見える妙なものがいるのではないかと思ったわけだ。その妙なものが、

「幽霊、ねぇ……」

ぽつりとつぶやいたが、ハルヒも坂中も話に夢中で気づいていないようだった。妙にホッとしつつ二人の会話に聞き耳を立てる。

「あと、もうひとつ気になることがあるのね。同じ犬仲間の樋口さんて人がいるんだけど、その人、多頭飼いしてるの。だけど、今朝そのうちの一匹を散歩に連れてきていなくて。理由を聞いたら、具合を悪くして通院中ってことだったのね」

たくさん飼っているのならそのうちの一匹ぐらい調子が悪くなったところで別段おかしくもない、気もする。が、その前に幽霊云々の話を聞かされれば、自然とそこに結び付けてしまうのが人間の思考力の恐ろしいところだ。
ちらりと名前を見ると、これと言って変化のない表情がそこにあった。幽霊話を決して楽しむようなやつではなかったが、ここまで起伏のない表情をされてしまうと、どこかおかしな気持ちになる。この騒動に、幽霊は関係ないのか?



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あきゅろす。
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