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幽霊か違うのか


「幽霊?が、出るって?」

今まで真面目くさったツラを浮かべていたハルヒが、とたんに目を輝かせ始めた。さっきまでの表情は坂中が話しやすいようにわざと浮かべていたものなのか何なのかはわからんが、今の表情はとりあえずわかりやすい。ソワソワと、期待するようなまなざしを浮かべたハルヒをちらりと眼だけで見あげた坂中が、こくんと頷いて続きを口にする。

「うん。近所で噂になってるのね。あれ、もしかしたら幽霊なんじゃないかって……」

近所で噂の幽霊とは、これまた微妙だな。幽霊だと思っているのが坂中一人であれば勘違いで済まされそうなものの、大人数ときている。

「そういう話になったのは、つい最近のことなのね。三日くらい前かな、あたしも変じゃないかなって思うようになったんだけど……」

うんうんと、いかにも訳知り顔で頷くハルヒは何の自信があるのか笑みすら浮かべていた。なんだこいつ、確実に楽しんでるな。

「ぜひ、詳しい話を聞きたいわ。幽霊……そう、幽霊ね。坂中さん、それ間違いなく幽霊なのよね?なら、あたしたちの出番であることは間違いないわ」

あたしたちの出番と言われても、俺たちは心霊探偵でも専門科学者でもなんでもないしな。今まで幽霊というモノの類で問題解決した事例もないし、今までそんな感じの活動をした覚えもない。

「あ、あの、ちょっと待って。ね、待って、涼宮さん」

焦ったように坂中が声を上げた。きらきら瞳を輝かせながら一人で突っ走っているハルヒに自ら制止をかける女子などそうおるまい。

「幽霊って決まったわけじゃないの。あくまでそれっぽいなってだけでね。あくまでも噂なんだけど、あの場所がおかしいってことだけはわかってて……」

そこまで言いかけて、ふと坂中が口を閉じた。
自分がSOS団全員から視線を集めていることに驚いた、もしくは竦んでしまったのだろう。ぴくりと体を強張らせて、俯いてしまう。それを見て、ああこういうのが普通の女の子の反応なんだろうと思った。普段、普通とかけ離れた女とばかり接しているから「普通」をうっかり忘れてしまうんだよな。

「……あ、あの。こんなんじゃ、だめだった……?」

びくつきながらそう言った坂中に、ハルヒが普通以上の声量で反論する。

「全然ダメじゃないわ、坂中さん!」



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