冷たい熱い
と、今日の記憶に思いをはせたところで、さらに思い出すのは少し前にやったテストのことだ。
今回のテストだが、いつも赤点スレスレの成績しか残せない俺にとっては奇跡的な点数ばかりが並んだ。なに、複雑な理由などどこにもない、ハルヒと名前のダブルコンボで俺に勉強を教え込んだからだ。
ハルヒは俺にヤマカンで出そうな問題を教え込み、名前はそれの簡単な補足をした。ハルヒの勘ならハズレはなかろうと踏んでのことだったが、これが恐ろしいことにほぼハルヒが言った問題ばかりが出たわけだ。
点数取って安心して忘れるのがキョンだから、となかなか辛らつなことも言われ、テストの復習も名前にさせられた。名前が俺の部屋に来て何かをする、ということ自体は嬉しかったのだが、久々に立て続けの勉強をしたため俺の頭は爆発寸前まで至った。
と、さらにそこまで思い出したところで、俺は周囲を見回してみた。
いつもの部室、配置もいつも通り。ハルヒはパソコンをカチカチ弄って、朝比奈さんは茶を淹れ、長門は窓際で読書、古泉は一人オセロ、名前は長門に勧められた本で読書中だ。俺は何をするでもなく、じっとそんなふうにいつも通り過ごしている皆を見ている。
「みくるちゃん、お茶ちょうだい」
「はぁい」
「冷たいのないかしら?さっきまでバレーやってたせいで、ノド乾いちゃって」
「冷たいのはないです。ごめんなさい……あ、冷蔵庫で冷やしましょうか?」
そう、部室には冷蔵庫があった。
とは言ってもさほど大きなものではない。一人暮らし用のほんの小さなもので冷凍スペースもないが、ジュースを冷やすのには役立っている。
その中に淹れたばかりのお茶を入れようとする朝比奈さんを見て、ハルヒは口を開いた。
「いいわ。冷やすのは手間がかかるし、お茶は淹れたてがおいしいしね」
すると朝比奈さんはにこにこと笑って、俺たちのところへお茶を運んで来る。いつの間にか向上した給仕スキルは今後どこで活用されるのだろうか。
お茶を名前の前に置いた朝比奈さんが、空になったお盆を胸に抱きながらぽつりとつぶやく。
「でも、冷たいお茶ですかぁ。それもいいですね。今度、水出し式のを買って来ようかなぁ」
あまりにもメイドとしての自覚が出過ぎていて怖い。放っておいたらあらゆる茶の淹れ方を身につけてしまいそうで、朝比奈さんになるべく余計な時間を割いてほしくない俺としては複雑な限りだ。
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