球技大会
三月上旬。
テストも終わり、あと少しで春休みというときに、我が校では球技大会が行われていた。
男子はサッカー、女子はバレー。球技内容はたまに変わるらしいが、大会自体は毎年行われるのこの行事、誰が決めたのかはわからないし何の意図を持って決めたのかもわからないが、テストが終わって皆ぐったりしているのだから少しくらい休ませてくれ、と思う。
もとより運動神経の良いハルヒと、バレーは多少の経験があるらしい名前は球技大会でほどよい成績を残していた。目の前で行われた試合、女子は圧勝だったが、五組男子は初っ端に九組とぶち当たり、惜敗だ。
「お疲れ」
スポーツドリンクを飲みながら友人と休憩をしていた名前に声をかける。ぱ、とこちらを見た名前が、俺を見てにこりと笑った。
「キョンもお疲れ!男子、残念だったねー」
「傷は抉らないでくれ」
九組と言えば古泉のいる特進コース。必然的に頭の良い奴らばかりなので、せめて運動方面では勝ちたいと思っていたのだがこのざまだ。仕方ない、突出した人間がいない、平凡なやつらばかり集まっているクラスだからな。いやなに、男子限定の話だ。女子も入れると途端に五組はおかしな集団になる。正確にはハルヒを入れると、か。
「苗字さん、お疲れ。よくボール拾ってたね」
「国木田くんもお疲れ!やー、運が良かったんだよ。ハルヒがいくらかブロックしてくれたしねー」
「涼宮さん、ジャンプ凄かったもんね」
「ねぇ」
のほほんとした会話を繰り広げる名前と国木田をよそに、ハルヒをちらりと覗き見した。今は若干むすりとした表情を浮かべているが、さっきは本当に違ったんだ。入学したては考えられなかったが、今では多少ハルヒもクラスに馴染んでいる。先ほど見せた、ともに戦ったクラスメイトと軽く拳を合わせたり、笑いあったりしている姿は、何か新鮮で不思議と落ち着いた。
「あ、次の試合始まりそうだね」
「ほんとだ。じゃ、行ってくるね」
行こ、と言って友人を引き連れて行く名前。バレーコートの中に入ったところで、審判が吹く笛の音が響いた。
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