新たな訪問者
「文芸部の活動に関する生徒会長の御意見も最もなんですが、まだ追求すべき問題があるのにも関わらず強制休部はやりすぎなのではないですか?もし納得のいかないようでしたら、活動継続に関する署名を生徒に募りますよ」
多分本気で言っているわけではないのだろうが、やれと言われたら本当にやりそうで怖い。いや、言われる覚悟で言っているんだろうな、たぶん。
俺やハルヒが署名を募っても「また何かおかしなことをやるんだろう」と思われる可能性が高いが、名前は普段の素行が悪かないから署名を頼まれても悪い気はしないだろう。自分の立場をうまく利用した発言だな。
「そこで、会長にご提案なのですが」
などと冷静に発言の分析をしていると、ちょうど良く立場が逆転したことあたりで名前が優しげな声を出した。先ほどまで、聞くだけなら聞いてやるという尊大な態度だった会長が、まるで名前の言葉を待つように口を閉じている。
「会長の仰ることも解りますが、文芸部に所属している長門さんにはあまりにひどい決定です。私たちとしては、文芸部の休部命令はお断りしたい。会長が1番問題だと思っているのは、文芸部が目立つ形で活動していないことでしょう?」
「……そうだな」
「折衷案といきませんか」
「折衷案?」
何を言い出すのか、とはもう思わなかった。名前の言いたいことをなんとなく悟ったからだ。
それを会長も理解したのだろう、まるで勝負に敗北したスポーツマンのように渋い顔を作り、眼鏡をかけ直す。そして、俺たちを見下ろしてきた。
「君の言いたいことはわかった。では、先ほどの通告は撤回しよう」
「ありがとうございます」
数分前まで劣勢だった俺たちが、今では優勢になっている。なんてこった、こいつ敵に回すと怖いな。わかっていたことではあるが。
折衷案の詳細は会長に任せるつもりなのか、それきり優しい笑顔に戻って口を閉じた名前に何かを言おうと身をかがめたところで、後ろからドアを蹴破らんばかりの勢いで何者かが入ってきた。
「こらぁっ!」
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