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反撃


緊張やプレッシャーめいたもので口の中がからからに乾く。だから今の発言は、決して俺のものではなかった。もちろん、長門ではない。かと言って古泉というわけでもない。
ということは、残るのはたった一人だ。

「ちょっとよろしいですか?」

昔これが決め台詞の刑事ドラマがあったな、ということをぼんやり思い出しながら振り返れば、案の定名前が控えめに手を挙げていた。表情はほんのり微笑んでいるが、目がちっとも笑っちゃいない。もしかしてこいつも、長門同様怒っているということか。

「苗字くん、だったな。何かね」

「2、3お聞きしたいことがあるんですが」

その気迫に押されて、半ば逃げるように名前の前を退いた。会長と対峙する形になった名前は、相変わらず目の笑っていないニコニコ笑顔で会長を見上げている。その、見慣れない怒りの形に古泉どころか長門すらも驚いたらしく、計四人の視線が一気に名前へと集まった。書記の人はなんとなく手元を動かしているのだけが見える。

「言ってみたまえ」

「ありがとうございます。……会長はこれまで、文芸部室まで足を運んだことはございますか」

急に何を聞きだすのか、驚いて名前を見下ろした。まだ笑っている。会長も、いきなり聞かれた点に驚いたらしく、その後眉根をひっそりと寄せて「無いな」とだけ答えた。

「そうですか。では、生徒会が認識している、文芸部本来の活動内容について教えていただけますか?」

「小説などの作品を読み、個人の感性や技術を磨き、意思があれば自ら文章などの『表現するもの』を書き、希望があればそれを規定の場所で発表・評価する部活……と認識しているが」

ここで若干、空気が変わった。会長の顔から、余裕がほんの少しだけ崩れたのだ。かわりに名前の表情に、かすかな余裕がプラスされた。あっけにとられている俺たちをよそに、名前は続ける。

「曲がりなりにも会長でいらっしゃいますから、全部活動の活動内容は存じていらっしゃいますよね。すごいです」

「…………」

「それで、先ほど会長が仰った活動内容ですが、間違っていないですね。私もそのように認識していましたから」

何を言うつもりなんだ?



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あきゅろす。
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