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スパイ疑惑


結局、ハルヒにばれそうになったりなんとかごまかしたりしつつ、なんとか放課後になった。
いやだー、と最後まで抵抗を続けた名前を半ば引きずるようにして生徒会室に向かう。生徒会室の前まで来たところで解放してやると、ここまできたらとでも思ったのか、いきなり抵抗をやめた。うん、人生諦めるってことも大切だよな。

「あっれー、キョンくんに名前ぷーっ?」

生徒会室に入ろうか入るまいか、とうだうだしていたところに声がかかり、二人そろって振り返れば、職員室の前に鶴屋さんが立っていた。先ほどまでは廊下にもいなかったから、ちょうど職員室から出てきたところなのだろう。艶やかに長い髪の毛をなびかせ、元気いっぱいの歩調で近づいてくる。

「どしたんだいっ?生徒会に用事かい?珍しいねえっ」

「ちわっす」

「鶴屋さん。こんにちは」

体育会系のノリで挨拶をした俺とは正反対に、名前は至極丁寧、しとやかに頭を下げた。先ほどの俺との攻防で、もう元気を出す力がほとんど残っていないのだろう。
生徒会室と俺たちを交互に見た鶴屋さんは、笑顔に若干剣呑なスパイスをふりかけた表情でこちらに視線をロックした。
疑問符を浮かべる俺と名前に接近し、いつものよく通る声をひそめて一言。

「もしかして、君たち生徒会のスパイかいっ?」

「えーとですね……。何の話かはわかりませんが、俺が誰かに密命を受けたスパイだったら、こんなに苦労していませんよ」

唐突すぎる問いかけに唖然としながらそう答えると、一拍置いて鶴屋さんが離れて行った。それから、豪快に笑って俺の肩をバンバンと叩く。

「だよねえ、悪い悪いっ。ちょーっと妙な噂を小耳に挟んだもんだからさっ!」

「噂?」

ハルヒが聞いたら興奮して話のタネを探りに行きそうだな、と思いつつ鶴屋さんの話に耳を傾ける。聞くところによると、これから会いに行く例の生徒会が、何やら黒い噂をひきつれているらしい。選挙で暗躍する人がいるだの、なんだの。
それが社会的レベルであれば俺も多少は考えたかもしれないが、たかが学校のいち生徒会にそんなちゃちい噂がくっついても興味が湧かない。第一、誰かを暗躍させてまで何をしたいと言うのか。

「なーんか嘘っぽいけどねっ」

俺が考えていることを読み、賛同でもしたのか、良いタイミングで鶴屋さんがそう言った。



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