[携帯モード] [URL送信]
保険要員


「こいつも連れて行くのはどうだ?」

後ろ首を掴んだまま名前を指差し、古泉に確認を取ってみる。ほう、と何やら面白そうに目を瞬かせた古泉が、名前へと視線を移した。ついでに俺も見下ろせば、嫌そうに顔がしかめられている。

「その理由は?」

「こいつがいたら場が落ち着く」

ほう、とまた古泉。
名前はと言えば、何言ってんだこいつ、と言わんばかりの表情を浮かべていた。

「生徒会室に行くメンバーは俺とお前と長門だろう?」

「ええ、そうですね」

「俺は生徒会長に文句や反論なぞ言えん。長門は聞き役に徹しそうだし、お前はあてにならん。なら、一番論破できそうなこいつを連れて行けば気分的に楽だ。違うか?」

「はあ、なるほど……」


ハルヒの前でのイエスマンぶりを見ていると、生徒会長なんて大層なもんには反論しそうにない。いや、ハルヒ以外の相手にはわりかしズバズバ言うのかもわからんが、保険を用意しておくにこしたことはないだろう。

「生徒会長からご指名をいただいたのは僕、長門さん、あなたですが……。そうですね、会長に打診してみます」

「ええ〜、いいよぉ……」

変わらず嫌そうな表情の名前は、ぷるぷると頭を横に振った。がしかし、今までなんとなく放置していた、かつ放置しておいたほうが無難とも言えるSOS団に自ら関わろうとする生徒会長だ、古泉の言った通り一筋縄ではいきそうにない。味方は一人でも多い方が良いに決まっている。

「では、僕はそろそろ失礼します。くれぐれも、涼宮さんにはご内密に」

「わかったわかった」

そう言うなり自分の教室に帰って行った古泉と、自分の役目は終わったと言わんばかりに無言で俺たちに背中を向けた長門を見送り、俺は小さくため息を吐いた。見ろ、もう昼飯が食えんじゃないか。食いっぱぐれた責任は古泉たちにある。放課後肉まんでも奢らせよう。いやもちろん奢らせるのは古泉だが。
などとどうでもいい、くだらないことを考えていた俺をじろりと見上げた名前は、恨むよ、と視線で語ってきた。頭ひとつ撫でるだけでその気迫を和らげるもんだから、なかなか単純なもんだ。



前*次#

4/47ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!