召喚指令
高校入学当初の初々しさも、三学期となればすっかり薄れてしまう。学校の良いところも悪いところも、楽しいところも悲しいところも、難しいところも簡単なところも、なんとなく理解できるのがこの時期のことだろう。
そんなある日、事件が起きた。とは言っても、SOS団に在中する限り、不思議な事件とは切っても切れない縁で繋がれてしまうわけだが。
「キョン、お前のツレが来てんぞ」
昼休み、弁当を広げてちまちまおかずを口に運んでいたところで、購買から帰ってきた谷口がそう言った。
ツレ、と言われて思い浮かぶのは名前だが、あいつはこのクラスの人間だし、いちいち谷口が「ツレ」と呼ぶこともない。よってそれ以外のツレ、となれば必然的にSOS団の、ハルヒと名前を除いた誰か、ということになるわけだが。
「……珍しいな」
おかずを咀嚼し終えて教室を出た俺は、思わずそうつぶやいた。外で待機していたのは長門――と、古泉。長門がわざわざこのクラスに来ることが珍しいというのに、古泉まで引き連れてくるというのは珍しいを通り越していっそ怖い。一体何があったんだ。
「呼び出し」
簡潔に答えた長門は、それですべての説明を終えたとばかりに口を閉じた。おいおい、それで伝えたつもりになっているんじゃなかろうな。思わず視線を古泉に送ると、苦笑ののちに補足説明がなされる。
「それでは、説明を……。その前に、涼宮さんはいらっしゃいますか?」
「おらん。四限が終わってすぐ出て行ったから、今頃食堂でテーブルでも齧ってるだろうよ」
「それは好都合です。彼女にはあまり聞かれたくないお話ですから」
そんな話は正直俺も聞きたくないのだが、と思ってちらりと視線を教室の中に戻すと、名前がクラスメイトと談笑しながらご飯を食べていた。視線に気づかれる前に、と顔をそらし、半開きだった扉を閉める。
古泉もそれを待っていたのだろうか、先ほど浮かべていた笑みを三割ほど増して、一拍置いたのちに口を開いた。
「実は、生徒会長から召喚指令が下りました。本日放課後、生徒会室に出頭せよとのお達しです。要するに、呼び出しですね」
ほほう、なるほどなるほど。呼びだされるのは解るさ、あれだけ好き勝手動いておいて、今まで呼ばれなかったのが不思議なくらいだ。しかし、何故今頃?で、なぜこのメンバーなのだ?
「俺からハルヒに言えってことか?」
古泉、長門に間接命令が下ったものの、自分の口からは言いづらい。だから俺に言ってほしい、ということならばわかるが。別にそのくらい言ったところで、ハルヒは怒らんとは思うぞ。
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