フォローしつつされつつ
「とりゃあっ」
気合いを入れているつもりなのだろうが逆に気の抜けるような声を上げたミクルに、ユキはあくまでクールな対応だ。
ミクルのビームやらワイヤーやらの攻撃に対し、ユキはあくまで無言のまま<スターリング以下略>を振る。
監督の『CGでは出せない味があるから』という意向により爆竹やらドラゴン花火やらを使用しているのだが、ミクルはいちいちその音に驚いては、「ひゃわあっ」だの「ひいぃっ」だの悲鳴をあげてしゃがみこんだ。
その間少女は目の前で行われている激闘(という設定なので何も突っ込まないでいただきたい)を茫然と見つめ、戦いに参加する様子も見せない。確か参加する気力も削がれるほどの激しいシーンを繰り広げる予定だったのだが、まああくまで予定は未定だ。
だがただ見守っているだけではいけないと気づいたのだろう、少女は飛び散る火花、もとい花火のかすに一目散に駆けていったかと思うと、静かに動いているユキに飛びかかろうとして、横から噴射したロケット花火に驚いて尻もちをついた。ここは重大なので聞いてほしい、ロケット花火は人に向けてはいけません。
「ふぎゃっ」
「だだ、大丈夫ですかぁっ」
敵対しているのか何なのかはっきりしてくれ、といった勢いでお互いをフォローしあうミクルと少女に、ユキは容赦のない攻撃を続ける。
「い、いけませんっ。な、長門さぁん…あの、この人はただの人間なのですっ!」
「戦いに参加したのは彼女の意思。そこからどうなろうと、わたしには関係のないこと」
正論だが、少しは慈悲の気持ちというものを……求めるだけ無駄か。
ユキが本気だとわかったのだろう、ミクルが今度は少女への説得へと取りかかる。隙だらけの今に攻撃を仕掛ければあっさり勝負にケリがつくだろうにユキが動かないのは何故なのだろうか。
「危ないです、あなたは逃げてください!」
「えっ、い、いや!」
「ユキさんはとっても悪い魔法使いなのですっ。だから、あなたが攻撃されちゃったら、ひとたまりもないのですっ……。」
「でも、イツキが、」
健気な少女にミクルも同調するところがあったのだろう、説得するために開いた口がゆっくりと閉じる。少女はふるふると首を横に振ったかと思うと、決死の思いとばかりの声音でつぶやいた。
「イツキのことだから……あたしが逃げるわけにはいかない。あなたたちがイツキのこと好きで、だから戦ってるなら、あたしがそこに入らないわけにはいかないの。あたしだって……」
些か顔が赤いのは、セリフがあまりに恥ずかしいからなのだろう。一瞬の躊躇のあと、少女は大声で叫んだ。
「あたしだってイツキのことが好きだもん!」
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