最後の決戦
今までの前振りは一体何だったんだという勢いで、ユキが最終決戦を申し込んだのだ。
「ケリをつけよう」
ミクルの下駄箱に無造作に置いてあった手紙には、以上の文章。のみ。
正直なところケリをつけるタイミングは今までに何回もあったと思うのだが、という見ている者全員が抱くであろう疑問はさて置いて、ミクルはその手紙をぐっと握りしめた。
「うん」
何がうんなのかはわからないが、一応その表情は決意を固めたものだ。
未来から来た戦うウェイトレスとして、イツキを見守るミクル一個人として、見過ごせない問題であると気づいたのだろう。……今更という突っ込みはしないでいただけたら何よりだ。
というわけで、決戦上の屋上である。
「ご…ごめんなさい。待たせましたか?」
「待った」
どこの冷めたカップルだ、というテンションで会話を交わした二人は、しばし見つめあう。気まずさすら感じる沈黙のあと、ユキはゆっくりと口を開いた。
「では、決闘を始めよう」
もう少し情緒のある言い方があったのではないか、なんて突っ込みはまたしてもスルーだ。緊迫感を感じる表情を浮かべたミクルがこっくり頷く。
「実のところ、もうわたしに時間はないのだ。遅くとも、あと数分で終わらせなければならない」
「うう、それはあたしも同感ですうぅ……」
それが映画の中での話なのか、それとも今回っているビデオのテープの問題か。それが明らかにされることはなかったが、とにかく二人の意見はどことなく一致しているらしい。ようはさっさと戦ってさっさと決着をつける。それだけのことだ。
ミクルは恥ずかしそうに顔を赤らめると、うう、と小さく唸るやいなや、裏返り気味の声で叫んだ。
「でで、でも!きっとイツキくんはあたしを選んでくれます。は、恥ずかしいですけど、あたしは信じてますっ!ユキさんには渡しませんっ!」
「わたしにとって彼の自由意思は関係ない。わたしは彼の力を手に入れるがために彼に近づいたに過ぎない。彼の力を手に入れるためならば、わたしは地球征服も厭わないのだ」
自由意思が関係ないのならば籠絡作戦なんて弄さずとも、今頃イツキ(の力)はユキの手に渡っていただろう。ただそこは映画の都合上スルーだ。
なんてことをしていると、ただでさえ滅茶苦茶な話をさらにかき回す存在が現れた。
「ちょっ……と、待ったー!」
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