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実は怖い人


「なんだ、テメー」

「なんだと言われましても。ただの北高生ですよ」

「っあ!」

古泉くんはさわやかに言い切り、男子学生の腕をもっと捻り、軽く突き飛ばした…ように見えたんだけど、思いの他男子学生は遠くまで吹っ飛んだ。
それから綺麗な所作で私の肩を抱き寄せると、体の後ろに隠す。

「クソがぁ………っ、死ね!!」

「素直に死んで差し上げるほど優しくはないので」

さらりと言い放ち、飛んできた拳を掴む。それからまるで綿ぼこりを飛ばすかのように、ふっと微笑んだ。掴んだ腕をくるりと回し、柔道の要領で地面に倒す。
左右から飛び掛ってきた男子学生2人を目の前にしてもちっとも狼狽せず、まず右の学生を腕で止め、左の学生を蹴り飛ばした。

「あまりこのようなことで無駄な時間は潰したくないのですが」

「無駄ァ?言ってくれるな……!」

わざと挑発するかのような古泉くんの発言に、男子学生が怒って攻撃をまた仕掛けてくる。パターン化した攻撃をやはり綺麗に受け止めると、男子学生の耳元で古泉くんはなにやらぽそりと呟いた。
一気に顔を青くした男子学生は、地面でのびている仲間2人を無理矢理起こすと、一目散に逃げていく。ちょっと笑えたじゃないか。

「…古泉くん、何言ったの?」

「いえ、たいしたことは言ってませんよ。彼の学年組番号名前を言って、少し驚かしただけです」

「なんで知ってんの」

これですよ、と言って古泉くんが投げた学生証。ほんとだ。顔写真が載った学生証に、全てが書いてある。いつの間にスったんだろう、と思い、やや背中から流れる汗を自覚した。古泉くんって何気に恐ろしいな。
だからせめて、『驚かした』ということについての追求はしないでおこう。

「さて」

古泉くんは服についた埃をパンパンと払い、私に向き、私の頬に触れるとにこりと微笑んだ。古泉くんの瞳の中に、口から少し血を流した私が映っている。

「詳しいことでも、お聞きしましょうか?」



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あきゅろす。
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