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歩道に倒れた三人


二人とも、きょとん、と言わんばかりの表情をしていたが、ユキが手をあげたことで何かが起こるということはわかったのだろう。指先に視線が移る。
だから、横からやってくるミクルの影には気づかなかったのだ。

「あ、あぶなーいっ!」

どぉん、と音をたててイツキと少女の体を突き飛ばしたミクルに、二人とも「うわあ」と「きゃあ」というやたらセリフくさい悲鳴を上げ、歩道に倒れ込んだ。その上を謎の稲妻が通り過ぎていって、電信柱にぶつかる。
歩道に倒れた三人の中でまず一番最初に起きあがったのがイツキだ。少女とミクルに挟まれているというなんとも腹立たしいポジションだが、そんな喜びに浸る暇もなくイツキは二人を揺り起こした。

「うう……」

「い、いたたた……」

なかでもミクルは派手な転び方をしたようで、涙目のまま側頭部をさする。
それでも果敢に立ち上がり、長門に向かって人差し指を向けた。

「あなたの思い通りにはさせません……!……ごめんなさい」

指を差したことをわざわざ謝罪するところが実にこう、ミクルらしいというか何というか。
控え目に指を下ろしていくミクルを無表情に見つめながら、ユキはぽつりとつぶやいた。

「今回はひとまず退散する。けれど次はそうはいかないのだ。また再び会うときまでに戒名を用意しておくがいい。今度こそわたしは容赦なくおまえを打ち滅ぼすだろう」

今までにも何度か思ったことだが、なぜユキはいちいちこうもミクルに時間的余裕を与えるのか。
しかもあのように過激なセリフを吐いたあとで、移動手段徒歩のまま立ち去るとは、なかなかユキもすさまじい神経をお持ちのようだ。相変わらずずり落ちそうな猫を肩に乗せたまま立ち去って行く背中を見送り、カメラワークはミクルたちへと戻る。

「ところで」

イツキが言った。

「あなたは誰ですか?」



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