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強引な手


ユキの肩には一匹の三毛猫が乗っていた。ユキの肩幅と猫の大きさが比例していないのか、ずり落ちそうに見えて危うい。
やはりぎこちなく談笑しながらこちらに歩いてくるイツキと少女を見ながら、ユキはオチそうになる猫を再び肩に押しやる。
ちなみに先ほどからイツキの幼馴染である名前をわざわざ少女と呼んでいるのは、天の声いわく助演女優だからだそうだ。
とかなんとか言っている間にも、ユキは二人の前に飛び出し……いや、飛びだすと言うにはひどくゆったりとした動きだったが、とにかく二人の前に立ちふさがった。

「何者です?」

との質問はイツキからだ。
もう少し良いセリフがあったのではと思うのだが、一応決められたセリフなので仕方ない。
隣の少女は突然現れたユキに驚き、目を見開いていた。が、視線が一瞬猫に動いたのは見逃さない。

「わたしは、魔法を使う宇宙人である」

ユキもユキでもう少し言い方というものがあったのではと思うのだが、以下略。
実に淡々とした応答に、イツキも淡々と返す。

「そうなんですか」

「そう」

「僕に何の用があるのですか」

「あなたには隠された力があるので、それを狙っているのだ」

「迷惑だと言ったらどうなさいます?」

「強引な手を使ってでも、あなたの力を手に入れるだろう」

「強引な手とは何でしょうか」

ヘタな翻訳機に翻訳させた文章をロボットに読ませたような固い会話はともかく、内容はそれなりに物騒だ。内容を理解できているのかいないのか、真面目と間抜けのちょうど中間みたいな顔でユキの動向を見ていたイツキと、もはや猫にしか興味がないと言わんばかりの視線を三毛猫に向けている少女へ、ユキはすっと手を伸ばした。

「こうするのだ」



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あきゅろす。
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