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現れる少女たち


ミクルが向かった先は、薄暗い文房具屋である。そこにたどり着くまでにかけられた慰労の言葉に、ミクルは律儀にお礼をしながら進んでいた。文房具屋は今現在のミクルの居住スペースでもある。店主の鈴木雄輔さん(65)がそのスペースを提供しているのだ。

「お帰り、ミクルちゃん。お疲れかい?」

「ただいまなのです。ええと、その……平気です。今日はお客さんも多くて、そのぅ……大繁盛でした」

謙虚な姿勢でぶるぶると手を振るミクルに、鈴木さんが「それはいいことだなあ」と声をかける。ミクルはそれに会釈を返し、二階へと上がっていった。
二階の四畳半一間がミクルの宿だ。もともと鈴木さんはほかに自宅を構えており、そのためこの空き部屋をミクルに提供している。ため息を吐きながらミクルがバニーガールの扮装を解き、そこで画面はいったん途切れた。
画面が回復する頃には、ミクルは大きなTシャツを着こんでせんべい布団に入り込んでいる。そこでミクルの一日が終わったようだ。

そして、実はイツキを見ていたのはミクルだけではない。もう一人、実は存在したのだ。その名を長門ユキという。ユキは、傍目にもわかりやすいトンガリ帽子にマント姿だ。一応その正体を明かすが、悪い魔法使いである。それだけでない、宇宙人でもあるのだ。
ちなみにどこかで聞いたことのある長門有希という人間とは他人の空似であり、実際の人物とは以下略。

「…………」

無表情のユキが立っているのは、とある高校の屋上である。実はこの高校、イツキの通っているそれであり、ユキもイツキに対して何らかの思惑があることを示唆するシーンなのであるが、先ほどのイツキの下校シーンのあとではあまり関連性がないように思えて微妙なところである。

そしてまたカットが変わり、今度現れたのは少女の後姿だ。ミクルでもなければ、ユキでもない。少女の視線の先には、今にも家に入ろうとするイツキの姿があった。イツキは少女に気づかないまま、家の扉を開き、中に入って行く。完全に扉が閉まったのを確認して、少女はふう、と息を吐いた。
この少女の名前は不明である。ただ、役柄ははっきりしており、イツキの幼馴染なのだ。イツキからは名前と呼ばれており、苗字ははっきりしない。どこかで見た顔でどこかで聞いた名前かもしれないが、これも他人の空似であり、一切の関係がないことをという説明もそろそろ疲れてきた。

「はあ……」


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