救世主参上!
「ヒスったよこいつ」
「ウザ。どうする?」
「さー。どっかつれてく?」
私の言葉も聞こえていないかのように、私を囲むようにじりじりと近寄ってくる男子学生。
年下にびびってなんかいられないと、私はお盆を胸に抱える。
肩を抱かれ、引っ張られる。「殴られちゃったから僕傷付いちゃったー。どっか行こうよ」お願いだから日本語を学んでから話しかけてほしい。全く要領の得ない言葉に、何を返答すればいいのかもわからない。
「ってぇ!」
とりあえずお盆で相手の頭を殴った。
顔を真っ赤にした男子学生が、怒ったように笑いながら肩から手を離す。
「…オネエサン、人殴っちゃいけないって言われなかったぁ?」
「ほら見て見て、こいつ頬赤くなってるよー」
言いながら、私の頬を掴んだ。
髪の毛をぐいっと引っ張られ、問答無用で私が殴ったところと同じところを殴られた。
口の中に少しだけ苦味が広がる。きっちゃったかな。
「……ん?」
ふっと頬にかかっていた圧力が消えた。
「――あなたも。女の人を殴ってはいけないと言われませんでしたか?」
もうすっかり暗くなって、町のネオンが光り輝き始める。
逆光で顔が一瞬わからなかったけれど、私の頬を掴んでいた男子学生の腕を掴み、捻り上げ、にこやかに笑っている男の子。
――古泉くんが、そこにいた。
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