[携帯モード] [URL送信]
次のグループ


最後の曲が終わって、盛大な拍手を送られながら舞台袖に消えて行ったハルヒたちを見届けて、俺は盛大な溜息を吐いた。曲は良かったが、精神的な疲労が計り知れない。
古泉はごく楽しそうな笑顔をキープしたままで、それ以上何を言うわけでもなく、ハルヒが消えた舞台袖を見ていた。何を考えているのか全くわからんが、とりあえず不気味だ。

「どうされたんです、そんな顔をして」

「疲れただけだ」

時間つぶしに来たのに、疲れてどうする。
それなら屋上か、まったく人が訪れていないであろうアンケート結果を展示している自分の教室にでも行って休んでいるほうが良かった。むしろ今から移動しようか、と思っていたところ、ちょんちょんと古泉の指先が俺の肩口をつつく。

「なんだ?」

「いえ、次のグループが入ってきますよ」

どうせ講堂から出るのならば、曲が始まる前に出たほうが良いだろうと思い、急いで講堂を出る。が、ハルヒの客寄せ(と言う言い方は何かおかしい気がするうが)によってみっちりと人口密度が跳ね上がった講堂からは、なかなか出られなかった。
古泉も思わず苦笑し、一時は浮かせていた背を再び壁に凭れさせる。

「あきらめましょう。どちらにせよ、このグループか、あるいはそのもう一つのグループ程度で終わるでしょうから」

「そうか……」

一曲が約五分だとして、それが一グループおよそ三曲か四曲。だったら短くても十五分、長くても三十分というところだろう。その程度なら余裕で待てる、と思い、古泉に同じく壁に背を凭れさせる。
講堂が再び静まり返り、次のグループが現れてくると、よりその静けさが際立った。一番最初に入ってきたのは男で、男はゆったりとした歩調のままドラムセットに向かう。緊張しているのか、足が若干震えているようだ。
次に入ってきたのも男。こいつもまた緊張しているらしく、手に持っていたギターを盛大にマイクスタンドにぶつけた。続けて入ってきたのも男で以下略。
最後に入ってきたのも男――随分と小柄だ。白いカッターシャツにネクタイを締めてはいるが、肩幅は合っていないし袖はぶかぶか。男の中では随分と華奢……いや、女と言ったほうがまだ納得できる。
こいつは意外なことに、堂々としていた。足取りはしっかりしているし、ギターの持ち方も決まったものだ。ただ、目深に帽子をかぶっているせいで顔が全く見えない。顎の線はわりとシャープだな、ということくらいはわかるのだが。

「……?」

なんだか引っかかるその姿に、俺は目を細めた。どこかで見たことがあるような。小柄なその男は、何の迷いもなくステージ中央に立った。ボーカルだな、と思いながらその様子を眺めていると、先ほどのハルヒと同じように、何の紹介やMCもなくドラムがリズムを刻み始める。
講堂に、ボーイソプラノが響き渡った。



前*次#

12/33ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!