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男子学生登場!


「すいません、遅くなっちゃって。今からでも大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫大丈夫。閉店は8時までだから、気にしないで。来てくれるだけでこっちはありがたいし…」

なぜかバイトを雇おうとしても、面接の段階でやめられちゃうんだよねー、と言って苦笑する山田さんを見ながら、私は苦笑する。
スタッフルームに入り、いつものメイド服に着替え(部室では教師、バイトではメイドって私コスプレしまくりだな)、店に出る。
店の中はやっぱり静かだった。山田さんが小さく切り分けたケーキを皿にのせ、お盆にのせ、外に出る。本当は奥様方の帰宅ラッシュが激しい5時頃が良かったんだけど、部活が終わるのは6時前後なわけで、もう間に合わない。
かわりにサラリーマンや高校生の帰宅ラッシュ。メイド服を奇異な目で見られるけど気にしない。ケーキを売り、店にいれ、店から逃げる後姿を見送ること4回。そろそろ疲れてきたな、と一息つこうとしたところで、さっき店に入っていった男子学生がなんともいえない表情をして出てきた。

「マジありえねぇ」

「なんだあの顔。ツキノワグマ?」

言いえて妙だ。ツキノワグマ…結構的確な表現かもしれない。
けど、私は少しイラッとした。中に入って、何も買わずに出てきて、言うことはそれだけかい。私がいやな目つきで睨んでいたのがわかったのか、男子学生(3人いる。全員どこにでもいそうなちゃらちゃらした外見だった)がこちらに歩いてくる。

「オネエサンが売ってくれたらな〜」

「俺、1個くらいなら買ったと思うんだけど」

「ていうか、なに?このケーキ、あのおっさんが作ってるってこと?」

ご丁寧に順番に言ってくれるものだから返事もしやすい。私は肩に乗せられた手をさりげなく外しながら、男子学生をじいっと見た。学ランだな。首もとに「T」とかたどられたピンがつけられている。…1年か。年下だという事実になんとなく肩から荷が下りた。

「はい、そうです。こちらのケーキは当店の店主、山田が全て手作りで販売しております」

「うわ、マジかよ。キモ」

…正直、彼らにケーキを買われなくて良かったかもしれない。こんな人たちに買われるなんて、ケーキが可哀想だ。一応表面上笑顔は作っておくけど、心の中は怒りの炎で燃え滾っていた。



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あきゅろす。
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