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NGな格好


SOS団クレジットの映画を少しでも宣伝するために、ハルヒと名前がビラ配りをして、あげくに捕まった後の話だ。
丈の短いメイド服に身を包んだ名前と少しの会話をした後、俺は外に出てビラを配りに行く名前を引きとめた。

「どしたの?」

「……いや、外でビラ配りはしなくてもいいんじゃないか?」

「何言ってんの、これを配り終えないとハルヒがおかんむりだよ」

いや、それは俺もわかってはいるんだが。
谷口国木田と待ち合わせをしている時間までもうほとんどない。なんとかしてこの恰好をやめさせる……いや、大衆の目に晒すのを止めることはできないだろうか、と考えた俺は、ほぼ口から出まかせに口にした。

「あの、ほら、ハルヒは外専門で、お前は中専門とか。外には帰る人だっているだろ?だったら、中でまだ文化祭を楽しむ人たちを探して、その人たちに来てもらったほうがよくないか」

多弁では逆に嘘臭さが目立つ、と思ったものの、言ってしまった言葉は取り消せない。どんな反応が返ってくるだろうと若干びくびく(と言うほど怯えてもいないが)していると、名前はきゅ、と目を見開いた。

「おー!確かにそうかもね。むしろあれだ、学生に渡せばいいのかも。たぶん知らないだろうから」

いや、結構な確率で映画を撮っていたことは知られているとは思う。思うが、改めて宣伝すれば多少は見る者も増えるだろう。見てほしいのかと問われるといや別にという気分だが。むしろ見ないでほしい。俺が出ているわけでもないのに心底そう思う。

「それなら、ちょっと私配ってくるね。じゃあ、っお?」

反射的に駆け出そうとした名前の手首を掴んだ。何をしてるんだ、と気づいて手を離すと小首を傾げながら名前が俺を見上げてくる。言い訳に困って口をぱくぱくさせていると、背後から天の声……と称するのは癪だが、まさしくそれに近い、谷口の声が聞こえた。

「おーっ、キョン。お前何やってんだー」

「よかった、今から待ち合わせ場所に向かうところだったんだよ」

続いて聞こえた国木田の声に、ぼんやり視線を向ける。俺の体に隠れて見えなかったらしい名前を視認した谷口が、急にテンションを上げた。

「うおっ、名前!どど、どうしたんだ?キョン、てめえなんで一緒にいたんだ!」

「わあ、苗字さん。すごい恰好してるね。もしかして、涼宮さん関連?さっき先生に止められてたみたいだけど」

谷口の意見はまるきり無視として、国木田の意見には俺が答えてやる。

「そのハルヒ関連だ。ビラ配りをしてて、格好にNG食らったらしくてな」

「えーまあ、そんな感じでして……」

どこの営業サラリーマン、といった風体で頭の後ろを掻く名前に、谷口が並々ならぬ興奮のしようで話しかけた。どうでもいいがその伸びきった鼻の下はなんとかならんのか。

「なら、ならさ、一緒に回ろうぜ!そのついでにビラ配りすりゃいいじゃねえか!」



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あきゅろす。
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