写真を見ながら
自室で勉強をしながら、進まない数学の課題プリントを睨みつける。頭の中で数式が踊ってはいるものの、どこに何が該当するのかがさっぱりわからん。サインコサインタンジェント、という響きはわりかし好きだったりするのだが、それを用いて複雑な計算式を解けと言われると途端にその好意が憎しみに変わるのは何故なんだろうね。
進まないため、手持無沙汰になった右手でぷらぷらとシャーペンを回転させる。ハルヒがこないだえらいまわし方をしていたが、俺は真似できそうにないな。
「キョーンー」
扉の向こうで声がして、思わずシャーペンを落とす。声をかけてくれるのは嬉しいんだが、先にノックをしてくれノックを。
「どうした?入っていいぞ」
「失礼しまーす」
まあ声でわかってはいたのだが、名前が扉を開けて部屋に入ってくる。あ、そうだ、こいつにわからないところを聞けばいいんじゃないのか?いいタイミングで来てくれたな、と思いながら姿勢を崩す。
「ずっと出してなかったんだけど、文化祭の写真。現像できたから」
「……誰が撮ったやつだ?」
「主に私かなー。合間合間に撮ってたんだよ?実は」
「そ、そうか」
結構名前のことを見ていたが(と言うとなんだか変な意味でとられそうだが)、そんなことをしていただろうか。ほとんど動き詰めだったような気がするのだが。こいつ、侮れんな。
「もし何か欲しい写真があったら、チェックして写真屋に出してくれる?見終わったら写真返してねー」
「ああ、すまんな」
「いいえー」
では失礼ー、と言って部屋から出た名前を見送って、数学の課題のことを聞き忘れたことに気づく。
まあ仕方ない。またあとで覚えていたら聞こう。
勉強机からベッドに移動して、ころりと寝転がる。そう多いわけではないが決して少なくもない量の写真を取り出して、一枚一枚目を通していった。
――そう、今から少し前のこと。とは言っても、まだ記憶に新しい。
ハルヒの無鉄砲な映画撮影に付き合わされたすぐあとの文化祭では、こんなことがあったんだ。
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