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怒らせちゃった


働いている時間は1時間強から2時間弱、ちっとも働いてないに等しいのに、家に帰ってから考える時間が長いものだからどっと疲れる。
保健室に行き、とりあえず体温を測って、睡眠不足で頭痛がすると嘘をつき(あながち嘘じゃないと思うけど)、寝させてもらうことにした。
ベッドに転んで数秒後、のび太なみの速さで眠りについた私は、夢を見ることもなく寝続ける。
あっという間に5限目が終わり、たいして寝た気がしない私はぐらつく頭のまま授業に出ようと思い保健室を出た。

「よく寝れたか?」

教室の前にはキョンが立っており、まるで教室に入るのを妨害しているようだ。

「あ、うん。おかげさまで」

ハルヒのお陰なんだけど、とりあえずキョンに頭を下げておく。
キョンは「そうか」と一言、それからまるで今日は晴れだな、とでも言うような自然さで私に問いかけた。

「それで、秘密ごとは話す気になったか?」

「え」

ぎくーん、と肩が跳ね上がる感覚。少しだけ開いていた教室のドアを閉めて、キョンは私を見下ろした。その顔、怖いよ。なんて顔してんの。

「とぼけるなよ。お前が明らかにおかしいのは気づいてんだ。ハルヒも気づいてる。友達の妹が引きこもりで相談受けてるなんて嘘だろ」

「う、う、嘘じゃないよ」

「嘘だ。お前は、嘘をつくときは笑顔が引きつるんだよ」

キョンは嘘をつくと目を合わせないよね。
その言葉を飲み込み、私はふっと表情を消す。隠し切るのはやっぱり無理だったようだ。ただし、まだキョンでよかった。いや、よくないけど。キョンにバイトしてるなんて言ったらきっと怒られるよね。怒られないにせよ、何か言われるかもしれない。最悪止めさせられるかも…それはないだろうけど。
キョンは、バイトをしたいとか、思うんだろうか。それでもSOS団に出てる。いやいやか、好きでいってるのかはわからないけど。そんなキョンを目の前にして、バイトをしてるからSOS団に行けないなんていえないよ。

「俺には言えないことなのか?」

「………」

「……………」

「………」

「……言えないんだな」

キョンははぁ、と溜息をついて、背を向けた。
ドアをあけて、騒がしい教室の窓際へ向かい、やや乱暴に椅子に座る。寝ていたハルヒが起き上がり、うっさいわね、もっと静かに座りなさい、と怒るのが見えた。
嫌われた、かな。
今更思えばそこまでキョンに隠すことでもなかったかもしれない。でも、もう遅い。
私は俯いて机まで歩いた。国木田くんが「大丈夫?」と声をかけてくれるのに、曖昧な笑顔しか浮かべることができない。
今日は、部活にきちんと出よう。遅れます…、って言ったら、山田さんはそこまで怒らないはず。それから、部活が終わったらすぐに行こう。



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あきゅろす。
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