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問題は山積み


「いらっしゃいませいらっしゃいませー!!ただいまケーキ全品200円となっておりまーす、いらっしゃいませー!!」

学校から出てすぐさま山田さんの店へ。渡されたコスチュームを着込んで外に出たはいいが、コスチュームに注文をつけておけばよかったと思わざるをえないね。
私は自分の姿を見下ろした。手にはケーキの試食を乗せたお盆、爪楊枝の入った小さな入れ物、それから爪楊枝を捨てる小さな入れ物。それから、………メイド服。
まさかずっと近くで見ていたようなメイド服を自分が着るなんて思わなかった。みくるちゃんなら100人中110人は(人数が超えているなんて突っ込みは受け付けない)「似合ってる!」と言うだろうね。私だったら良くて10人くらいか。10分の1…十分だ。

「あら、おいしそうねぇ。もらっていいの?」

「はい!こちら当店お勧めのベイクドチーズケーキです。そちらの奥様もいかがですか?」

接客業についていたことはあったので、人寄せは得意だ。わらわらと買い物帰りの奥様方が私に寄ってくる。ケーキ屋さんならメイド服もそう不自然ではないだろう。

「おいしいわねぇ!買っていこうかしら」

「ありがとうございます!あちらからお入りください、紅茶のサービスもさせていただいています!よろしければどうぞー!」

声を張り上げて店へ先導すれば、試食のケーキにつられた奥様方が店に流れ込んでいく。かと思えば、数秒とたたないうちにガタガタ震えながら出て行った。山田さん…!いったいどんな顔をして迎えたんですか。包丁とか持ってませんでしたか。
それから、ケーキを購入してくれた奥様もガタガタと、それこそケーキが危ういくらいに震わせながら出てくる。

「…やっぱり、問題は山田さんか……」

ケーキは大評判。けれど、お客さんは入らない。その心は、…山田さんが怖いから。
私は溜息をひとつついて店に入った。こないだは席についていたお客さんもいたけど、ごく稀だったらしい。今は店内に客はいない。
どうにかしないと。



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あきゅろす。
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