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未来人の苦手意識


朝比奈さんは何かを言い辛そうに、唇をぱくぱくとさせている。時折名前を見ている様子から、もしかすると名前がいると問題があるのかもしれない。名前は会話に入ることはなく、鞄から今日出された課題を取り出し、さっそく書き始めていた。

「あのぅ……」

名前が聞いていないことを確認して、ようやく言葉にする決心がついたらしい。ふっくらとした唇を何度かためらうように動かして、俯き、呟いた。

「あのね、キョンくん……。お願いがあるんです」

「……はあ」

まあそれなりに予想できていたことではあるので、いたって普通のテンションで返す。
朝比奈さんは申し訳なさそうに眉をへにゃりと垂れ下げると、続きを口にするべくまた口を開いた。そのときだ。
かちゃり、と小さな音をたてて部室のドアが開く。入り込んできたのは長門だった。入口で立ち止まったままの長門は、俺と朝比奈さんを交互に見、何かを求めるような視線を今度は名前に向ける。

「あ、やっほー、有希」

わかるかわからないか程度の頷きで、長門がそれに反応した。それから、俺と朝比奈さんの少し離れた横をするするとスムーズに進み、いつもの席に腰を下ろす。すっかり俺たちから関心はそれたようで、鞄から取り出した文庫に集中し始めた。
それを見ていた朝比奈さんが、気づいたようにはっと息を吸い、お茶の準備を始める。

「あっ、な、長門さん、ちょっと待ってくださいね。今お茶淹れますから……ぁ」

「どうしました?」

「水が切れてるみたいです……」

やかんを手に、困ったように首を傾けるしぐさがこれまた可愛らしい。
柔らかい髪の毛をさらりと揺らし、朝比奈さんは「ちょっとくんできますね」と言って外に出ようとした。

「あ、なら俺が行ってきますよ。外は寒いですし、その姿ではあんまり行きたくないでしょう?」

「あ……」

朝比奈さんの手からやかんを軽く奪い、ドアを開ける。いまだに長門と二人きりなのは苦手らしく、部室に残るのは……という表情をすることはあるが、今は名前もいる。何かあったのだろうかと立ち止まって見下ろすと、あたしも行きます、と言って俺を半ば押すようにして部室から出た。

「朝比奈さん?」

「ご、ごめんなさい」

いえ、押されたことに関しては全く気にしていないのですが。



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あきゅろす。
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