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不自然な動揺


その日、名前の様子が変だった。

いや、変と表現するのはどうかとは思うが、他に表現のしようがないので勘弁していただきたい。とにかく、なんとなく違和感を覚えるような、奇妙な動きを、あいつはずっとしていた。それこそ、休憩時間から授業中までだ。
どう見たっておかしいだろう、何かあったんじゃないのか?
……とは、俺が思った感想であり、谷口や国木田からしてみればいつもと全く変わらないらしい。具体的にどこがどう変なんだよ、と言われると説明できないレベルのものなのだが、それでも俺からしてみると非常におかしいのだ。

「名前の様子?」

昼休み、食堂から戻ってきたハルヒに聞いてみたところ、ハルヒは数回俺と名前を見比べて、納得のいかない様子で首を左右に傾けた。

「いつもどおりに見えるけど……」

「……そうか」

ハルヒもそう思うなら、もしかすると俺の勘違いなのか?



「今日、調子悪いのか?」

文芸部室に向かう前、さりげなく聞いてみた。
掃除当番のハルヒに先に行く旨を伝え終わった名前が、俺の質問を聞いて目をぱちくりさせる。どこかきょとんとした感じが見受けられ、やっぱり俺の勘違いだったのだろうか、と思ったそのときだ。

「えっそ、いや……、そんなことな、いよ?」

びっくりするほど名前が動揺した。
さすがに自分でも驚きすぎだと思ったのだろう、一度咳払いをして、「いやそんなことないけど、どうしたの?」と逆に問いかけてくる。
しかし、一度でもその動揺を見てしまった俺としては、それを見逃すわけにはいかない。やっぱり何かあったんだろう、と詰め寄れば、やたら焦ったような顔をして名前がぶんぶんと首を振る。
ここまでくると面倒だ。こいつは、一度言わないと思ったことは絶対に言わない。特に人から頼まれたことだとか、口止めされたことだとか、そういうことだとなおさら。
もしや誰かと何かがあったのか?と勘ぐっても、答えが出てこないので仕方無い。問い詰めるのを諦めて体を離すと、いっそ露骨なほどに、安堵した溜息を吐かれた。



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