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不安の種


「…………」

どう反応しろって言うんだ。
黙り込んだ俺を見て、古泉は苦々しく口角をあげた。笑うというよりは、習慣づいた動きで勝手に口角が上がってしまったような感じを受ける。

「……誤解のないように言わせていただきますが、これが真実だという確証はありません。すべてにおいて僕の想像です、お間違えなきよう」

そんな、オマケ程度につけ足された言葉を単純に飲み込むことができるか。
一気になんとも言えない空気になってしまったが、古泉は言いたいことを言い終えて満足したようだし、長門はそもそも口を挟むつもりがないのか黙り込んでいるし、朝比奈さんはオロオロとして口を挟む余裕すらなさそうだ。
しかしその件にはあまりつっこまない方がよさそうだな。無難な言葉を選べば自爆しそうだ。

「……とりあえず、その件はさて置いてだな……」

「はい」

「名前の魂、って言えばいいのか?それと、ハルヒの体はどこにいったんだ?」

これも気になっていた質問だ。名前の体はここに存在する。しかし、本人の人格は存在しない。逆に、ハルヒは人格が存在する。しかし、体が存在しない。
そうなった場合の、自律進化の可能性うんたらかんたらは一体どちらの力が反映されるのか。そもそも、この不可解な現象はどうやって直るのか。

「その件については、僕から説明するよりも彼女からのほうが良いでしょう」

古泉がするりと視線を流して長門を見る。長門は俺を見上げ、何かを待つように黙っていた。俺が何かを聞けば答えてくれるのだろうか。

「長門、わかるのか?」

「……現段階では、何も言えない」

何も言えない、とは。
とたんに不安になってきて眉尻が下がる俺に、長門は何かを言おうとして口を開き、何も言わず閉じた。



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あきゅろす。
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