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羨む立ち位置


「他の方よりはいくらか、涼宮さんに精通しているとう自覚はありますが……、細かい精神状況などはわかりませんからね。決めつけた言い方はできませんが」

それでも無意味な憶測ばかり口にされるよりは、はっきりと言ってもらったほうがすっきりする。
古泉はおもむろに顔をあげると、意を決したようにつぶやいた。

「一言でいえば、嫉妬……でしょうか」

「はぁ?」

この場で言っていいような話題か。と言うか、突拍子がなさすぎて困る。もっとこう、世界規模での問題なのだから、アレやコレな重たい話題を出されると思っていたのだが。

「いつぞやの件をお忘れですか。涼宮さんにとって、重たいも軽いも何も関係ないのですよ」

そのいつぞやの件とやらは、俺とハルヒが閉鎖空間に閉じ込められたときのことを言っているのか?
思い出したくもない話題を掘り起こされて少なからず気分を害したが、確かにあれは軽い問題が世界規模に発展した一例だったな。いや、あれはハルヒの問題だから俺が話題の重い軽いを決めていいってもんじゃないんだが。

「で、その嫉妬が、なんで今回の問題に関係してくるんだ」

「五人世界に残る上で、誰が必要かを順位立てていったのでしょう。いえ、順位をつける、という言い方は良くないですね。SOS団の誰かが欠けるくらいであれば、自分が消えたほうがいい。しかし、自分が消えてしまっては団が成り立たない。誰か一人いなくなるとすれば?」

「…………」

なんとなく想像ついたような気がして、俺は静かに口を閉じた。そこで自分が口をはさんでしまったら、いけないような気がしたからだ。古泉はその沈黙で何を思ったのかはわからないが、ひとつ頷いて続ける。

「その時、頭に過ぎったのがあなたのことだ。はっきり言って、涼宮さんの世界を開拓したと言っても過言ではないあなたは、五人枠から外れることがない。そのあなたの一番近くにいるのは?あなたが一番好意を寄せているのは?正直言って、傍から見れば少なからずわかる……、特に、自分ではない、ということには」

「…………」

「名前さんの居場所を、羨ましいと思ってしまったのでしょう。最悪、五人枠から彼女を外してしまったのかもしれない……それはないと思いますがね。とにかく、そのような背景があったからこそ、今のような状況になった。涼宮さんが、名前さんの立ち位置を羨んだから――」



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