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一人多い


半分ほど伏せられた古泉の瞼が、疲れたように痙攣している。吐き出された声も、心なしか重苦しく感じられた。

「……昨夜の番組がどういった内容のものであったかはご存知ですか?」

「細かくは覚えちゃおらんがな」

確か、もしも○○が××だったら〜、といった仮定でゲストや視聴者に向かって質問を投げかける番組だった。俺たちが不穏に思ったのは、番組の半ばに出された質問だけで、他は本当にどうでもいいような、他愛もないものだったはずだ。

「そう、あの問題以外はいたって他愛もないものでした。ただ、涼宮さんはほかのことに興味も引かれないほど『あの問いかけ』にひかれた。それほど彼女にとって、印象強い問題だったわけです」

ぴん、と人差し指をたてて、ふらふらと振る。古泉はそのまま、淡々と続けた。

「もしも世界に人間が五人しかいなかったら――?涼宮さんは考えたでしょう。その五人はどうやって選抜されるのか。もしも自分を含めての五人であったのならば。知人、家族、友人……五人では足りない数の人間が頭に浮かんだことでしょう」

そうだろう。俺だってあた、頭を悩ませたさ。家族をとるか友人をとるか、それとも俺以外の五人をどうにか選抜するか。でも俺はただの凡人で、それを願ったってどうにもならん。だから考えるのをやめたんだ。
だがハルヒは違った。考えをうっかり実現させてしまう能力を持っていた。だからこんなことにって、そりゃわかる。わかるが、わからん。
なんでその姿なんだ?

「もしも自分を含めSOS団が世界に残ると考えた場合、困ることがひとつあります」

「……一人多い、か?」

「そうです。我々SOS団は全員で六人。一人あぶれてしまうのですよ」

そりゃわかる。俺だってそれを思って、誰も外すことはできないと考えたからこそ考えるのをやめたんだ。
でもあなたと涼宮さんは違いますから、と古泉が首を横に振る。わかってもらいたいけれどわかってもらいたくない、そんな顔だった。

「けれど、SOS団は誰ひとりとして欠けてはならない。もしどうしても誰か一人消えなければならないのであれば、自分が――、しかし、それではSOS団が成り立たない。ならば、どうしたらいいのか……」

「その結果が、これだって言うのか?」

眠るハルヒを指差し俺が問いかけると、古泉は曖昧に首を動かして、しまいにはうつむいた。



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