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昨夜の不安


中身はハルヒと言え、外見は名前のままだ。ソファの背もたれにかけていた上着をかけ、話し合いを再開する。
誰が会話の皮切りをするか、と口を閉じて見ていたが、やはりこの空気の中真っ先に口を開けると言ったらこいつくらいしかいないだろう。

「朝、機関と連絡がつながらないことからなんとなくいやな予感は感じていたのですが」

どうやらここにいた長門を除く全員が、昨日のテレビを見ていたらしい。最悪の事態にならなければいいが、と思いはしたものの、テレビが放送されてしまった時点で打つ手はない。というわけで、結局何もせず昨日は寝たようだ。
起きてから異変に気づきはしたものの、それに対しての打つ手もない。そこに長門から収集がかかり、(なぜか)俺の家に集まったということだ。

「唯一の救いは、情報統合思念体が残存しているということでしょうか。彼らに頼るべきではないとは思っていますが、今は彼らか……長門さんに頼る以外に術はないでしょうから」

まあ、確かにそれは思う。未来からの干渉があるかもしれないが、朝比奈さんがこの状態である以上、そこに望みを託すわけにはいかまい。古泉が属する機関とやらも、構成人員が消失しているため、どうしようもないしな。

「あるいは、涼宮さんの能力、あるいは名前さんの能力で現状を打破するか……と考えていたのですが」

古泉の視線が眠りっぱなしのハルヒに注がれる。正直なところ、ハルヒの自律進化の可能性うんたらかんたらを観察する立場にいる情報統合思念体が動くのを待つよりは、ハルヒが現状を否定し、「元の世界に戻る」よう仕向けるほうが楽だ。
あるいは名前が、とは言っても、こいつの能力は決して大きいわけじゃない。ヘタに頼るのもプレッシャーをかけてしまうようで申し訳ないから、できれば俺はその選択はしたくないと思った。
……今となっては、頼みようもないことだが。

「それで、長門」

「なに」

「さっきも聞いたことなんだが」

長門が無言で俺を見上げる。
たぶん、残り二人も同じことを考えているだろう。どうしたんですかと言葉を挟まれることもなく、俺は答えを保留にされていた問題を口にした。

「……どうしてハルヒは、名前の姿をしているんだ?」

「……」

長門はやはり無言で、視線を古泉に移す。古泉は戸惑いながらも、なぜか納得したように軽くうなずいて、「あくまで僕の考えですが」と前置きし、重い口を開いた。



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あきゅろす。
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