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ささやかなフォロー


「こんにちは。大丈夫ですか?」

俺の顔を見るなり笑顔でそう言った古泉に、俺は首を傾けた。とりあえず玄関に入れて、続いて入ってきた朝比奈さんに挨拶をする。
朝比奈さんは目に涙をためて、唇を引き結んでいた。まるで今にも泣きそうな表情だ。
夏が繰り返されたあの日、未来と連絡を取り合うことができなくなって、えらく不安そうな表情をしていたのを思い出す。

「朝比奈さん、未来と交信できますか?」

「っ、ふぇ、ぐしゅっ……、禁そく事項ですぅ……」

余計に不安をあおられる。ついに泣き始めた朝比奈さんを見てうろたえていると、キッチンからハルヒが出てきた。名前の格好をしているためか、古泉が一瞬表情を緩める。

「みくるちゃん!?どうしたの!?」

「っ、」

名前ちゃん、と言いかけた朝比奈さんが口を閉じた。この様子だと、長門からすでに聞いているのか、未来と交信して教えられたかのどちらかだな。中にいるのがハルヒだと気づいたのだろう、びくりと震えたあと、また泣きだす。
キョンが何かをしたの、とでも言いたげに俺を見てきたハルヒも、今の現状を思い出したのか、何も言わず朝比奈さんの背中をなでた。

「みくるちゃん、驚かないで聞いてほしいんだけど」

「っうぇ、はい……」

「大丈夫です、長門さんから事情は聞いていますので」

ハルヒが続いて口を開こうとした直前に古泉がフォローに入る。何かしらパニック状態に陥っている朝比奈さんにはこれ以上語りかけない方がいい。既に小さな声で「きんそく…きんそくがぁ……」と呟いてしまっているあたり危ないだろう。
リビングから出てきた長門が、俺たちに中に入るよう促した。

「とりあえず二人のお茶も淹れてくるから、待っててちょうだい」

名前の姿をしたハルヒが、慌てた様子でキッチンに引っ込んでいく。その後姿を見つめていた古泉が、落ち着かない様子で溜息を吐いた。

「……大変なことになりましたね」

「そうだな」

落ち着かない様子で手を組み、隣で震えている朝比奈さんを見下ろす古泉。を、じっと見つめていると、驚いた表情でこちらを見てきた。それからすぐに、何かをこらえるような表情へと。
案外落ち着いているんですね、と言われて、何を言われたのか一瞬わからなかった。



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