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ことの発端


その番組を見たとき、俺はなんとも思わなかった。いや、平凡な人生を歩んでいる以上(涼宮ハルヒという人間と関わった時点でもはや平凡とは言えないのかもしれないが)、その番組に心惹かれるのは当然であるはずだ。

『もしも、世界に○○があったら、あなたはどうしますか?』

テレビの中で司会者と思しき女性がうっすら笑みを浮かべる。
もしも、という言葉がついている以上、これは仮想世界の問題だ。いま俺たちが生きている世界にあるものではない。どうしますか、と聞かれてもわかりませんねとしか答えられないが、どうしますかと聞かれた以上は考えてしまうのが人間ってもんで。

『もしも世界に、人間が五人しかいなかったら?』

なんだその局部的な質問は。話が突飛すぎるし、人数が五人ってあたりも微妙だ。だがやはり考えてしまう俺。世界に五人、五人なあ。いろんな国の人間が一人ずつ残ったら、とかそんな感じか?そもそもなぜ五人しかいないんだ?
ああ、ダメだな。俺はそもそも、ということを考えてしまうから、やたらとリアルに考えてしまって面白くない。妹であれば、「みんなで仲良く暮らす」なんて能天気な答えを口にできるのだろうが、俺は基本リアリストだから。いや、そうでもないか?

「世界に五人かあ」

俺の横でテレビを見ていた名前が、ぽつりとつぶやいた。名前も比較的俺と考え方が似ていて、いちいち現実的に考えてしまうようだ。

「ええと、人口的な部分を考慮して、中国人が1人でしょ、……」

何やら指折り数えているようで、俺よりも考え方が生々しい。もう年を取ってしまったのか、いまいち夢のある考え方ができなくなってしまったようだ。
集まった芸能人たちが、わたしの友人が一人と両親と恋人とー、と何やら世界に残るメンバーのことを考えているが、これは「自分を入れて五人」なのか、「自分を抜いて五人」なのか?世界に五人ということだから、当然自分を入れて五人なのだろうが。
ふいに考える。もしも俺が、自分本位に世界に五人を残すとしたら。そりゃあ当然俺は残りたい、が、あともう四人はどうするか。
親族全員は入らないし、谷口や国木田が世界から消えていくのも忍びない。いや当然名前にはいてもらいたいが。ハルヒや朝比奈さん、長門はもちろん、古泉だって、選び切れはしないしなあ。五人という数の制限は非常に難しい。

「まあ、もしもの世界だしねえ」

「まあ、そうだなあ」

顔を見合せ、のんびり名前と話しながら、テレビにまた視線を戻す。呑気に考えていたこの出来事が、後々尋常じゃなく面倒なことになろうとは、このときはまだ気づいていなかった。



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