間一髪の出来事 「名前!!!!!」 「っ…!」 助けに行きたいのに、朝比奈さんがいるため放ってはおけない。 しかもしがみつかれているものだから、無理にほどくこともできそうにない。 思った以上に俊敏に動くカマドウマが、倒れた名前めがけて向かってくる。「名前!!逃げろ!!!」俺がそう叫んでも、物事はそううまくは進まない。動けない名前は、突進してくるカマドウマになす術もなく固まっていた。 「名前さん!!」 その瞬間、いつもとはかけ離れた鋭い声を上げた古泉が、飛び込んで名前を引っつかみ、その場から逃げる。間一髪で突進は免れたようだった。 名前を自分の後ろに隠した古泉が、再びサーブを打つように紅玉を、さっきよりか幾分乱暴にぶつける。今度こそカマドウマは大人しくなったようだった。 「……今度こそ、終わりでしょうか?」 こくんと頷いた長門に、俺は長い息を吐いた。それと同時に名前がぽけっと開いていた口を閉じ、古泉を見上げ、また開く。 「古泉くん、ごめん……ありがとう」 「いいえ。それより、お怪我はございませんか?」 「うん、ちっとも。本当にありがとう」 古泉はさわやかな笑顔を浮かべ、「いいえ、苗字さんが無事でよかった」なんて薄ら寒い言葉を吐いている。 あれ?そういえばさっき。と、俺が首を傾きかけたその瞬間、名前が指を古泉の鼻先に寄せた。 「さっき、名前で呼んだよね?」 「え」 「名前さん、って言った。よね?」 「……………そうでしたっけ?」 前*次# [戻る] |