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光線銃携帯許可


この空間に部長氏がいるらしい。俺はひとまずぐるりと体を回転させて三百六十度見回してみたが、部長氏らしき人間はどこにもいなかった。あまりにも恐ろしい空間だ。もし俺が一人でここに来ていたのなら、軽く発狂してるね。

「どこにいるんだ?姿が見えないが」

古泉は名前を見る。名前は微笑んで、長門に視線を送った。なんだその、アイコンタクトみたいなのは。いつの間にそんなに仲良くなったんだお前らは。
長門が視線を合図にしたように、そっと片手を上げる。今度こそ俺は叫んだ。「待て!」その声に律儀に止まってくれた長門は、俺を見ないまま手を留めて、よくわからない空間を見つめている。

「何をするか教えておいてくれないか?せめて心の準備期間は欲しいぜ」

「何も。………おでまし」

人差し指を伸ばし、先ほどまで無感情に見つめていた空間を指差した長門を見る俺に、名前は小さな声で呟いた。

「大丈夫。…有希は、キョンの味方だから」

「…………」

しかし心の準備期間は欲しいぞ。
そうか、と言って頷いた俺は、名前から視線を剥がした。長門が指を指していたその空間に、何も無かったその場所に、なんというか………、まあ。「うーん」唸らずを得ないものがどどんと集結しはじめている。

「明確な敵意を感じますね」

「なんていうか……うわあ」

ぶわわわわ、と集まる黄砂のようなものから身を守る術を、俺と名前と朝比奈さんは持たない。と、思う。
光線銃とか持ってないんですか、と問いかけた俺に、朝比奈さんは首をぶんぶんと横に振る。

「武器の携帯は厳禁です。あぶないです」

かわいらしく涙を滲ませる朝比奈さん。さすがに光線銃は持っていなかったか、と思っていると、ふと視界の端にやたら表情の強張った名前が映る。

『発達した銃器』

――長門の声が甦った。
三年前のあの日、長門の部屋で話したこと。今の朝比奈さんは武器の携帯は厳禁だという。けれど、名前に攻撃したときには恐らく一人だったはずだ。
やっぱりランクアップすると武器の携帯とかもOKになるんだろうか。そうでないとつじつまが合わない。それか、名前の場合は特別なのか。…ああ、くそ。考えても結果なんて出てこない。
そうこうしているうちに、黄砂のような何かが固形物に固まり始めた。形成しているようだ。いよいよ身の危険を感じはじめた俺の前に、名前が俺を守るように立つ。お前が俺を守ってどうする!



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