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引き金となったもの


「感覚としてはあの閉鎖空間に近いものですね。あれは涼宮さんが発生源ですが、こちらはどうも違う匂いがします」

口を開いた名前よりはやく、古泉のフォローが入る。お前、長門とうまくやっていけるんじゃないか、俺は応援するぞ。なんてことを考えつつ、真剣な顔をして考える二人を見る。
長門が短い返答をした後、不意に手を伸ばした。空気を撫でるような仕草をしたその瞬間、俺の背中を悪寒――もしくは嫌な予感が駆け抜けていった。超マッハで。思わず反射的に、比較的近くにいた名前の腕を掴む。俺はそのとき、待てと一言でもいいから言うべきだったのだろうか。長門はやはり超高速の呪文のようなものをとなえた。
次の瞬間俺の目の前に現れたのは、部長氏の部屋でもなんでもない、そうだな、表現するならば砂漠が正しいか。めまぐるしい視界の変化に、俺は瞳の表面に痛みを感じた。
それから、まだ名前の腕を掴んでいたことを思い出し、急いで離す。

「す、すまん」

「いいよ別に。大丈夫?」

「ああ、」

そりゃ展開を知っていたから当たり前ではあるが、少しは動揺とかしてくれてもよかったんじゃないのか。まるでいつもどおり、学校の教室にいるかのような普通さで、名前は俺を見上げる。
俺が名前から手を離すと同時くらいだったかもしれない、朝比奈さんが飛びついてきた。柔らかい腕にしがみ付かれて、俺は一瞬昇天しそうになる。

「侵入コードを解析した。ここは通常空間と重複している。位相がズレているだけ」

ちんぷんかんぷんな俺とは裏腹に、名前と古泉はうんうんと頷いている。くっそ、なんかむかつくな。どうしてだこの苛立ち。

「涼宮さんの閉鎖空間ではないようですが」

「似て非なるもの。ただし空間データの一部に涼宮ハルヒが発信源らしいジャンク情報が混在している」

「どの程度です?」

「無視できるレベル。彼女はトリガーとなっただけ」

「なるほど。そういうことですか」

何がなるほどなのかはわからないが、まあいい。俺は後でゆっくり名前に説明でもしてもらうことにするさ。トリガーくらいはわかったがな。引き金だろう。
ひとまずこの空間をじっくり見てみることにした。まだ朝比奈さんが俺にしがみ付いている。正直…たまりません。



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