蜃気楼 06 「明るい……」 未だ陽は高く、空は青く、雲は薄い。 脳天を灼くような日差しに目を細め、手で僅かながらも影を作る。 こんな瞳の色をしているせいか、照る太陽の光には滅法弱い。時折、刺すような痛みが目の奥を走っていく。 「行くか」 空港から出て真っ直ぐ進んでいった。 視える。 ただ、それだけ。それだけで充分なのだ。 ウェルシア旧射撃訓練場までは空港から約120km程。歩いて行くのは到底無理な距離だ。 どうでも良い。どうせ直ぐ着く。あいつが居る。 イヴはゆったりとした動きで空を見上げた。 遥か高く、蒼天を黒い物体が飛んでいる。 ―――ヒュゥッ 一音、イヴは首に掛けていた銀色の笛を鳴らした。 緩やかに自由に飛んでいたそれが、音を聞くや否や、イヴに向かって一直線に降下してきた。 目にも留まらぬ凄まじいスピードで。 直前で急ブレーキをかけたように一瞬、停止する。 そして前に突き出したイヴの腕に、緩やかに留まった。 「シヴァ…行くぞ」 その鷲はシヴァという。 破壊を司る神の名前を冠す無二のイヴの家族。 その姿は黒く、大きく、気高く、恐ろしい。絶大な威圧感を以て、一切の反旗を認めない存在。 シヴァは大きくその羽を広げ、イヴと共に飛び立っていった。 > [*][#] |