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St. Valentine's Day
今年のバレンタインは日曜日。
前日の土曜日に1日かけてばっちり仕上げをして、本番当日。
片手に小包を下げて、片手で少しどきどきしながらインターホンを押した。





出迎えてくれた執事さんに「景吾様は今温室にいらっしゃいますが…ご案内しましょうか?」
と言われたがやんわり断り、何度か行ったことのある温室に向かう。
くそでかい敷地をしばらく歩くと、目的のガラス張りの建物が目に映った。

ゆっくり扉を開けば、冬だというのに暖かい室内、色とりどりの植物。
ある種異世界だと思いながら辺りを見渡す。



「ああ、よく来たな」


声のした方に振り向けば、葉の隙間から目的の人物が覗いた。
その片手には赤い薔薇が一本。



「Happy valentine」


ちゅ、と花びらに一度唇を落とし、その花はゆっくりと俺の胸ポケットに差し込まれる。
ひとつひとつが優雅で様になる姿。

近くにある白い頬に、引き寄せられるように口づけた。


「……おおきに、」


満足げに微笑む顔。
ああ、愛しい。


「…戻るぞ、部屋」


くるりと背中が向けられ、ゆっくりと離れていく。
その後ろに付いて行きながら片手の袋から急いで包みを開き、中身を取り出す。
小粒のチョコレートを一つ口に含み、彼の手首をつかみ取り無理やり引き寄せる。
勢いでこちらを向かせ、文句を言おうと開いた口から言葉が出る前に塞いだ。

中で溶けたチョコを擦り付けるように舌を絡める。
漸く口の中から独特の粘りが無くなったときには、お互いの唇はべたべただった。


「Happy valentine」








へ、て。





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20100214
St. Valentine's Day!


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