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Target 4:Quattro



Target 4 Quattro



「…君が転校生でしょ。
ついて来なよ」


雲雀さんは表情ひとつ変えず言うと、背中を向けた。
トンファーをちらつかせながら。

ツナは幾分慌てた様子であたしに耳打ちして来る。


「この人には絶対口ごたえしちゃ駄目だよ!
…咬み殺されるから」


「……い、いえっさ〜…」


雲雀さんに連れて来られたのは、予想通り恐怖の巣窟、応接室。
転校生ってこんな怖い思いしなきゃなんないの!?


「座って」

「は、いっ」


緊張で噛みそうになった。
おとなしく腰を下ろすと、目の前に紙コップに入った麦茶が出される。


―――え?


予想外の事に目をぱちくりさせる。
だって、あの雲雀様がお茶を出すなんて!
当の本人は優雅にコーヒーを飲んでいらっしゃる。
仕方がないので、あたしも麦茶に口をつけた。
ほんのりと口の中に冷たい感触が広がる。


「これ手続書類なんだけど、なんでここ空欄なの
?」

「え」


「並盛の前に通ってた学校ないわけ?」


あたしは困った。
そんな事言われてもないもんはない。
リンクったら、適当に書いてくれれば良かったのに。


「ま、まあ…」

「ふうん」


興味無さそうな返事って一番傷付く。
不意に、硬い金属音がして雲雀さんの方を見てしまった。

…後悔した。

事もあろうに雲雀様はトンファーをこちらに向けていたのだから。
あたし、なんも悪い事してないのに!
ヒュッ、と空を切る音。
殴られる、と思ったのは一瞬で、次の瞬間にはあたしの首すれすれの所でトンファーが止められていた。


「ワオ、逃げなかったんだ」

「怖クテ逃ゲル余裕アリマセンデシタ」

ものっそい片言になりながらも声を絞り出す。


「ふうん、今までの転校生よりは骨があるみたいだね。
じゃあ、行って良いよ。君、2年A組だから」


―――は!?

一方的に質問してトンファーで恐怖植え付けて挙げ句「帰れ」と?


「あの、」

「なにか用?」

「雲雀…先輩、ちょっと自分勝手過ぎませんか。
もう少し相手の事考えないと、だから生徒に恐れられるんですよ。
生徒の事も考えて活動するのが風紀委員ってものじゃないんですか」


一気に言いきる。
言ってから後悔した。
だって、雲雀様からものっそい殺気が!


「僕に喧嘩を売るなんて、良い度胸してるね。
そんなに咬み殺されたいわけ?」


あーあ、どうしよ。
こうなればもう売り言葉に買い言葉だ。


「何で風紀委員が喧嘩とかしてるんですか」

「僕は弱くて群れる草食動物が嫌いなんだ。
見てると咬み殺したくなる」


雲雀さんは一歩ずつあたしに近付いて来る。
漫画のキャラ相手にこんなに緊張するとは思わなかった。
けど、あたしも怯みを見せないように雲雀さんを睨んだ。
その態度がますます雲雀さんの勘に障ったようで。


「そんなに僕に咬み殺されたいのなら、お望み通りにしてあげるよ」


―――はい?


「かみ、ころ…?」


オウム返しにそう訊くと、雲雀さんはあたしの首を壁に押し付けて絞めた。


「血ヘド吐くまで咬み殺してあげるから、覚悟しておきなよ」


―――苦しい。

息ができない。
首に押し付けられた雲雀さんの手から殺気が伝わってくるかのようだった。
気を失いかけたその時。
フッと雲雀さんの手が離れ、あたしは床にへたりこんで咳き込む。


「これに懲りたら、もう僕に盾突こうなんて思わない事だね」


そう言い放つ雲雀さんの目に含まれる、好奇。
あたしは、その場で意識を失ってしまった。



後悔した時にはもう遅い




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