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Know
Target 10:Dieci

桃の緊張は、最大に達していた。
隣には、あの憧れてやまなかった雲雀恭弥。
向かうは"こっちの世界"の彼女の家。
まるで夢小説のようなこのシチュエーションは、雲雀ファンならおいしすぎる。

恭弥はさっきから一言も喋らないが、今にも触れそうなその肩がとても熱かった。
商店街の脇を通る時、スーパーの前に見覚えのある制服の二人組を見た。


「犬…千種…っ!?」


思わずその名を口にすると、恭弥は足を止め、二人は驚いた顔でこちらを見る。


「なんでお前、オレ達の名前を知ってるんら?
柿ピーの知り合いびょん?」

「違うよ」


―――どうしよう。
名前を呼んでしまった手前、人違いとも言えない。


「…骸が、言ってた」


吐き出すようについた嘘はかなり苦しかったが、犬が口を開く前に、恭弥に遮られた。


「その制服…隣町の黒曜中のだね。
…並盛に何の用?」


いつもよりもことさらにひくいトーンの声に、二人は敵意を感じ取ったらしい。


「犬、骸様を待たせるから行こう」

「えー、こいつら殺しがいありそうらのに」


その言葉に恭弥が眉を上げるが、渋々と犬が千種について行ったため、トンファーを出す暇はなかった。


「あの草食動物達は、何なの?
君、知ってるんでしょ」

「……あたしの嫌いな人達です」


桃は恭弥の言葉に、ただそれだけ返した。











赤く染まり始めた空に、星が瞬き出した。


「送ってくれてありがとうございました。
……また明日」


恭弥は、なぜか彼女の元を離れるのを躊躇した。
桃は恭弥にとって、ただの下級生でしかないはずだった。
彼女が転校して来たその日にいつものように応接室に連れ込んだら、彼女は憶する事なく、自分のやり方に反論した。
彼女が単なる草食動物ではないと分かったのはその時。


「ひ…雲雀さん…?」


「……なんでもない。
じゃあね」


恭弥はそのまま桃に背を向けた。










「桃、帰ったのか?」

ディーノは風呂を掃除していたらしい。
風呂場から出て来た彼を見て、桃は顔を真っ赤にした。


「でっ…ででディーノさん何その格好!?」


彼は今、上半身裸で、下は下着一枚を身に付けているのみだった。


「何って、服が濡れんだろ。
……ははぁん、桃はこういうのに免疫がねぇんだな」


ニヤリ、と笑うディーノ。
桃がそれによって、更に顔を赤くした。


「よっ…余計なお世話よ!
まだ中学生なのに男の人の、しかも年上の……は、裸なんて見る機会そうそうないもの!」

「…だからお前、いつもこんな無防備なのか」


不意に、後ろを向かされそのまま抱きすくめられる。
温かい体温を直に感じて、桃の顔に熱が上がる。


「何、してんの変態っ!
はっ、早く離さないと咬み殺すよ!?」


「はは…変態ね。
好きな奴に触れたいと思うのは男の性ってもんだろ」


桃は耳がおかしくなったのかと思った。
あるまじき単語が聞こえた気がしたから。


「…今…なんて?」
「お前が好きって言ったんだよ」


―――ディーノさんが、あたしを好き?

うそ…そんなわけない。


「あ、う、ゴメン、ディーノさんっ。
あたし、頭冷やして来る!」


桃はそのまま家を飛び出した。



突然の告白

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