Know Target 9:Nove Target 9 5時間目の授業、あたしはまったく集中出来なかった。 "雲雀さんにキスされた" その事ばかりが頭の中を支配している。 「九条、おい、九条!」 隣の席の獄寺の声で、あたしは我に返った。 「先生が睨んでんぞ」 慌てて教壇に目をやると、先生が怖い顔でこっちを見ていた。 「九条桃。 俺の授業で上の空とはいい度胸だな」 「あ、いえ、その」 すると、先生は溜め息をついた。 「お前の気持ちは分からんでもないが… 転校初日から雲雀に目をつけられて、休み時間ごとに呼び出されてるらしいな」 教室内にざわめきが広がる。 その殆どが恐怖や、驚きの色をしていた。 あたしは改めて、雲雀さんが恐れられてるという事を認識した。 授業が終わってすぐに、ツナが席に来た。 「雲雀さんに呼び出されてたの、九条!? け、怪我とかしてないよね!?」 ツナはいつも、真剣に心配してくれる。 それは嬉しいけど、ちょっと擽ったくて。 「大丈夫だよ」 それでもまだ心配そうな綱吉。 「心配してくれてありがと、ボス」 「ぼ、ボスなんてやめてよ… オレはマフィアになんかならないんだから」 綱吉は手を振って言う。 本当に綱吉は争いを好まない。 殴り合いですらした事がないのだろう。 どうしてそんな綱吉がボンゴレの十代目に選ばれたんだろう。 思わず、あたしはツナの顔をジッと見つめてしまった。 「な、何?」 「ううん…なんでもない。 あのさツナ、もしも…周りの人達が次々襲われていって、笹川さんや黒川さん達も狙われたら、助けるよね?」 「え…あ、当たり前だろ!」 「―――相手が雲雀さんより強くても?」 決して六道骸の肩を持つわけじゃないけど、骸と雲雀さんでは、骸の方が強いと思う。 「ゴメン、変な事聞いて。 忘れていいよ」 「…戦うよ」 「え?」 「敵わなくても…京子ちゃんやハルが危険な目に遭ってるんだったら、オレ、戦うと思う」 そう言ったツナの目は強い決意を宿していて、それはまさにボンゴレのボスにふさわしいであろうものだった。 ―――ああ、やはり彼こそがボンゴレの十代目に相応しいのだ。 「失礼します」 ノックをして、今日3回目の応接室に入った。 さっきの、唇の感触を思い出し、顔が熱くなる。 雲雀さんは珍しく本を読んでいた。 「あれ、雲雀さん…何読んでるんですか?」 「別に」 そう言って本を隠してしまう。 き…気になるなぁ。 「ほら、帰るよ」 「……え?」 「君を待ってたんだからね」 待ってた…あたしを? 「君が此処に通ってるのはほぼ全校生徒が知ってるよ。 それだけ君は僕に反感を持つ生徒達に狙われ易くなるからね」 そ、そんなアホな…… でも元を辿れば自業自得か。 「君は僕が家まで送り届けるから心配しなくていいよ」 ―――え。 「えええぇ!?」 「うるさい」 ひっ雲雀さんが家まで送ってくれる…って。 何、このストロベリィな展開は! ドキドキスクールライフ [*前へ][次へ#] |