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Target 8:Otto



Target 8 Otto



「あっ、桃おはよう!」

「おっす、九条!」


教室に入ると、ツナと山本が笑顔で挨拶して来た。
手首の鬱血を見られないように後ろ手に隠しながら挨拶を返す。


「獄寺もおはよ」


案の定、獄寺は返事をして来なかったが。
その代わり、あたしをじぃっと見ている。


「…お前、十代目に何か隠しただろ、見せやがれ」

「え、な、何も隠してなんかないよ」


ぐいっと強い力で手首を前に出させられる。
ツナ、山本、獄寺の3人はそれを覗き込み、絶句した。


「…なんだ…これ?」

「手首真っ赤だよ!?」

「あの、実はね………」







「何ぃ!?」


「雲雀に」


「襲われかけた!?」


山本、獄寺、ツナの順に叫ぶ。


「そーなの!
こう、ガバって押し倒されて、手首締められたの!
本当に咬み殺されるかと思った」


あたしは身振り手振りを交えて説明する。
ツナは「痛まない?」とか「保健室行こうか?」
とかすごく心配してくれたけど、大丈夫って笑って言った。
なかなか消えないなんて、雲雀さんの力は相当強かったみたい。


「雲雀に喧嘩なんか売ったりするからこうなるんだよ!
自業自得だ、バーカ」

「獄寺…そんな言い方ないだろ」

「良いよ、山本くん。
本当のことだもの」


あたしは自分の甘さを反省した。
恐らく、後数日で骸が行動を始めるだろう。
あたしがしたい事はただ一つ。
少しでもツナの負担を減らし、みんなの代わりにフゥ太を助ける事。
だって、あたしもボンゴレファミリーの一員だもの。











昼休み、あたしはお弁当を持って応接室に行く。
ノックをしようと手を上げた時、中から声がした。


「入って来れば?」


なんで気配に気付くの!?


「し、失礼します」


ソファで弁当を食べている雲雀さん。
その向かいには、あたしの席だとでも言うかのようにお茶がある。
仕方なく、手を合わせて弁当を食べ始める。


「………雲雀さん」

「何?」


「あたしがここにいる意味はあるんでしょうか」

「あるよ。これ頂戴」


そう言ってあたしの弁当箱から勝手におかずを取る。


「あっ、あたしのハンバーグ」


初めて、この応接室で肩の力を抜けたような気がした。


「ハンバーグ、好きなんですか?」

「うん」


事もなげにあっさり言う。
意外と子供っぽいのが好きらしい。


「その割に、お弁当はコンビニのなんですね」

「作らないから」

「え、どうしてですか?」

「君、さっきから質問ばかりだよ」


鬱陶しげに言う。
雲雀さんの不機嫌な表情を可愛い、なんて思ってしまう。


「だって雲雀さんのこと、もっと知りたいです。
なんでそんなに、群れるのが嫌いなのか知りたいんです。
本当の雲雀さんはきっと、優しい人のはずですから」


雲雀さんは黙り込んだ。
怒ってるんじゃなくて、驚いてるみたいな表情。


「じゃあ、昼休み終わるんで失礼します」


そう言ってあたしは応接室を出ようとした。

が、あたしの手首を掴んだ雲雀さんの手が、それを阻んだ。



「ひばりさ、」






ちゅっ


頬骨の辺りに、温かな柔らかい感触。

それが雲雀さんの唇だと認識したのは、少し赤くなった雲雀さんの顔を見た時だった。


「…ねぇ」

「え?」

「やっぱり君は弱いよ」


そう言って雲雀さんは、あたしから目をそらした。



優しい、弱い



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