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SS
『眼鏡』


そんな真っ直ぐ射るような眼差しで見つめられたら
降参して、白旗をあげるしかない。




毎回毎回、テストで赤点を叩き出す弟を見かねて
成績優秀品行方正優等生の鏡、兄エースが立ち上がった。


「オレは、形から入るタイプなんだ」

アホみたいな台詞を呟きながら、普段は全くかけない
『眼鏡』をかけて颯爽と現れたエース。
(こんなバカっぽいのに、なんで勉強できんだろ…?)
そんな失礼なことを思い浮かべながら、しぶしぶ机に向かう。


さすがと言うべきか、教え方はすごくわかりやすくって。
授業中はまるで呪文なんじゃないかと思えた公式達の、本来の姿がみえてくる。


ーー教えてもらっている最中、
フッと教科書から視線を外してエースを見ると
レンズ越しに、視線がぶつかった。


(………!)
普段より色を含んだ、射抜くような瞳。


「おい、ルフィ。ちゃんと集中して解け。」
クイッ、とフレームを指で押しながら、一言。


「だって、わかんねーんだもん…」

普段と違うエースの姿に、
声が上擦る。
呼吸が速くなる。

顔が火照っていくのを感じて、誤摩化すように視線をそらす。


でも、そんなオレに気付いたエースは逃がしてくれる訳なくて。


オレにしか魅せない、不敵な笑みをニカッと浮かべて

「やらしいことばっかり考えてる、
ダメな生徒にはお仕置きしないとなァ?」

そんなこと、耳元で甘く囁かれたら、もうダメだ。


せっかく教えてもらった公式達が、頭から零れ落ちていく。




ーー『エースの眼鏡は反則だ』

負け惜しみみたいな台詞を吐いて、眼鏡でサドな兄に、口付けをせがんだ。





end



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あきゅろす。
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