text 『儚い』※切 ※ジャンプ590話までの微ネタバレあり 空になった皿に、カシャン!と銀のフォークを投げ出す。 「ごちそーさん」 そう呟くと同時に席から腰を上げる。 「なんだ、ルフィもういいのか?」 空になった食器をマジマジと見て、サンジが問いかけてきた。 「結構食ったぞ?腹一杯になったら眠くなっちまった。オレ先寝てるな〜」 まだ食事中の仲間達にひらひらと手を振って、寝床へ向かう。 誰もいない寝室に1人。 ベッドにごろんと身体を投げ出す。 目を閉じると浮かんでくるのは 記憶に焼き付いて離れない、あの笑顔。 ------------------------------------------------------------- あの日から、一度も泣いていない。 守りたいものが、この両手に収まりきらないほどたくさんあるし、支えてくれる仲間達がいる。 それに泣いてばかりいてエースに心配をかけるわけには、いかないから。 だけど、眼に映るどんな景色にもエースの姿を無意識に捜してしまう。 匂いを、体温を、吐息を、捜して捜して。 でも、いくら瞳を凝らしても見付けられない。 ゴツゴツとした優しい手で触れて、 柔らかい唇で口付けて、 両手で息が止まるほどキツく抱き締めて、 温かい体温を、 存在を感じさせてほしくって、たまらない。 誰よりも 何よりも 守りたかった 救いたかったのに。 ------------------------------------------------------------- 眼を閉じて、眠りに落ちる時だけ期待に胸が高鳴る。 エースに逢えるかもしれないから。 好きだよ好きだよ好きだよ 逢いたいよ 寂しいよ 辛いよ ありがとう ごめんね 愛してる 気が狂いそうなほどの 募る想いを 押し殺して。 今日も淡い期待を抱きながら 瞳をとじる。 おやすみなさい end [*前へ][次へ#] |