text 『光』※ジャンプ589話までの微ネタバレあり ※エース視点 真っ暗だ。 光も、音も、匂いも、空気さえ感じない。 身体が重いような、軽いような。 海の奥底は、こんな感じなのかな。 行った事がないから、わからないけど。 随分前に、ヘマをして海に落ちた時に感覚が似ている。 あの時は慌ててサッチが海に飛び込んで助けてくれたっけ。 マルコにめちゃくちゃ怒られたなー。 懐かしいな。 色々な思い出が走馬灯のように頭の中をゆったりと流れていく。 これが、永遠? 生まれてきた意味を考えながら、生きてきた。 オレなんか生まれて来ない方がよかったんじゃないのか。 そんな考えに縛られていた。 いつからだろう。 自分の頭の大半を占めていた “ ”が 薄らいでいったのは? …あぁ、そうだ。 泣き虫で手がかかる弟が出来てからだ。 自分のことで悩んでいる暇がないくらい、毎日が慌ただしく、だけど楽しく過ぎて行った。 ルフィーーー。 傷つけられる前に、傷つけて。 どうせ嫌われるなら誰も好きになんか、ならない。 そうやって生きていく術しかしらなかったオレに、沢山のモノを与えてくれた。 愛するモノを失う、恐さ。 愛するモノを守る、強さ。 幸福、苛立、嫉妬、葛藤、哀、寂、楽、愛……。 怒りしかなかった心に、感情が洪水のように溢れた。 自分がこんなに色々な感情を持ち合わせているなんて、ルフィに出逢うまで、知らなかった。 ルフィはオレの心を、創ってくれた。 思い返せば、幸せな、人生だった。 鬼の血を引いているのにも関わらず、 あんなに沢山の人達に、愛してもらえた。 あんなに沢山の人達を、愛することができた。 そして、何にも変えられない、大事な兄弟が出来た。 こんなに、幸せなことなんてない。 生まれた時から重い荷物を背負って、無我夢中で走り続けてきた。 そして、こんなに沢山のモノを手にすることが出来た。 …でも、なんだか、すこし疲れた。 もう、休んでもいいよな? 『エースっ、エース…!!』 …ルフィ? 泣いてるのか? ルフィの、泣き声が聴こえる。 男のくせにメソメソしやがって、しょうがねぇな。 誰に泣かされたんだ?兄ちゃんがそいつのことぶっ飛ばしてやる。 いつまでも泣き虫な弟を持つと、疲れた、休みたい、なんて言ってられないな…。 真っ暗で何にもなかったハズなのに。 光が、みえる。 心が、引き寄せられる。 そりゃそうか、オレの心を創ってくれたのは、ルフィなんだから。 思わず目を細めてしまうほどの眩しい光に 手を、伸ばした。 end [*前へ][次へ#] |